渋沢栄一 その3。日本に帰って見たもの。そして何をしたのか

渋沢栄一、3回目になります
過去2回は以下の通り
渋沢栄一 その1 クーデター計画
渋沢栄一 その2 パリ万博から諸外国へ

帰国命令
日本に帰ってどうなるか、まあ大体は想像がつく
良いことがあろう訳がない

引き伸ばしたかったが
とうとう、新政府から渋沢一行に帰国命令

帰るに当たって、気になるのはいつも行動を共にしていた
いとこの喜作の事

悪い予感は的中した。

自分達は負けた方の総大将、徳川慶喜の部下だった訳ですから

幸いにして、恭順の意思を表明した慶喜は、まだ首を取られてはいなかった。
御大将の命を守りたい
その一心で、成一郎と名を変えた渋沢喜作は、彰義隊(しょうぎたい)を率いていた。
頭取渋沢成一郎、副頭取天野八郎

以前の栄一であれば、一目散に駆けつけただろう
でも、諸国を巡った栄一は、全く違ったレベルにあった

バカなことを

案の定、成一郎の思いとは別に
天野八郎一派が、武力を用いた過激な行動を取り始め
彰義隊内での主流派に取って変わっていく。

まずい
成一郎は脱退し「振武軍」と名を変えた新しい組織を立ち上げる

残った方の彰義隊は、ご存知のように、上野戦争に突入

その一報を聞いた成一郎
袂をわかったとは言え、元仲間
助太刀しようと、偵察に行かせる

どうだった?

うん
負けたよ

はい?
まだ始まって半日ですけど

やばい
こっちにも来るぞ
逃げなきゃ

何とか逃げ切った
よせば良いのに
榎本武揚と合流し、函館戦争
そこでも命拾い

栄一はずっと冷やかな目で見ていた。

その後
栄一。このあとどうするつもりじゃ

慶喜様のお側で暮らしとうございます。

諸国をお供した、弟昭武の手紙を携え
慶喜のいる駿府へ

昭武様のお手紙をお持ちしました。
お目通り願いとう存じます。

出迎えてくれたのはみすぼらしい格好の男性

これはまた下に見られたもんだ

ところがもう一度見返して目を疑った。
そこにいたのは、慶喜本人

ま、まさか

手紙をお渡しし
諸国の土産話

黙ってはいるが
終始笑顔で楽しそうに聞いている

ご苦労であった。

そして
翌日、栄一の元に届いたのは辞令
立派な役職の任命

ここ、面白い心情だなあと思いますが
栄一は拒否するんです。

慶喜様のお側で暮らしたい、は
お仕えしたい、の意味ではなかった。
ただ、お側で暮らしたいだけ

やりたいことがあった。

諸国を巡り、頭を離れなかったこと。

外国には、日本の店とは比べ物にならない、会社なるものが存在していた。
なぜあれだけの規模のものが成り立ち、産業なるものが成立しているのか
不思議でたまらなく聞いてみると
株式なる仕組みがあって広く大衆から金を集め
それで運用するのだと

金を集めたり、はたまた貸し付けたりするのを
バンク、というところが取り仕切っている

日本と諸外国にここまで差がついてしまっているのは
個々の人間の能力に差があるわけではない

「仕組み」があるかないか
バンクがあるかないか

意識に差が出てしまっている
商人の意識
日本の商人は、ただ武士におもねって、卑屈になっているだけ
外国の商人には、私達が国の産業を支えているのだという気概があり
政治家も商人を尊重し、対等に接する

これ
これがしたい
これが日本に必要だ

バンク
何のノウハウもない。
具体的なノウハウを聞く時間はなかった
そういうものがあるのだと聞いただけ

考えよう
やってみよう

この時は、株式会社なんて言葉はないから
栄一は「合本組織」という言葉で表現した。

本人にも分からないような仕組みに
大事な金を出資してくれるものなどあろうはずがない

そう思うんだけど
不思議です。
栄一の情熱はそれを上回った。

少しずつではあっても賛同者が現れ出した。
そして、拒否した相手、静岡藩内でも
大久保一翁(おおくぼいちおう)が理解を示してくれ
協力してくれることになった

妻子も静岡に呼び寄せ
さあ、これからだ

そんなとき
静岡藩を通じて、東京の新政府から
東京に来るようにとの通知

今更、腹を切れとは言わないだろうが
何の用事があるのだろうか
今の新政府を構成しているメンバーには
誰一人面識のある人はいない
そもそも私の名前をなぜ知っているのか
もしや、合本組織の事が耳に入って
邪魔をしようというのか

いずれにしても
普通に考えて
賊軍の者に対する出頭命令で
良い話であろう事はなかろう

ああ憂鬱
そう思いつつ、東京に向かう

この続きはその4でね

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