囲碁棋士、小林禮子の手紙

心にひびく日本語の手紙、シリーズです。

囲碁棋士、小林禮子(れいこ)さんのちょっと変わった手紙になります。

夢で石田君と早碁の機会を得た。
正体のない碁だったらしく、局後その意味のことを指摘される。
心の通わない碁を打ちはじめて久しい。
夢ではなくこれは現実。
今の私はなにを求めて生きているのでしょう。
以前のままの私の方が好きなの?
三年前に戻れというの?
それは無理です。
私はあなたのなかに住みはじめているのですから。
広い外界から自分をシャットアウトして、
私はただあなただけを見つめて生きているのです。
ほかのものは私の目のなかに入りません。
あなたの吐く息のなかでひそかに呼吸することに
喜びを感じはじめているのです。
もし、世の中のいろいろなものが目のなかに入ってきたら
私は今の自分の行動を推し進めることができないかもしれないのです。
見て見ないふりではないの。
すでに見えなくなっているのです。
恋は盲目というのはあたっています。
手合いやめて、稽古やめて、一日中あなたのことを想い続けて

ラブレター
ラブレターですね

背景が分からないと分かりにくい手紙です。

小林禮子さんは、17歳で囲碁棋士デビューし、女流名人として活躍。
「あなた」は誰かというと小林光一。やはり囲碁棋士
旦那さんです。

この手紙の時点で、結婚しています。

えっ
結婚しててラブレター?
直接言えばいいじゃん、て思いますね

光一は、12歳の時、禮子のお父さん木谷實のところに弟子入りします。
その時、禮子は25歳。
6年後、二人は愛し合うようになり、光一は禮子にプロポーズ

周囲は大反対
師匠の娘に手を出すとは何事だ
しかも、13歳も年上女房
結婚まで、3年もかかります。

でも、ようやく結婚できて良かったね
チャンチャン

大恋愛の末の結婚で、9年もの交際のあと。
新婚の時は盛り上がるでしょうけど
まあ、あとは下り坂。
一般的にそう思います。

どこかの家庭の話ではなく、
あくまでも一般論。

ところが、禮子の気持ちの中で
じわじわーじわじわーと変化が生じていく。

旦那さんの事が好きで好きで仕方なくなってくる
そして、仕事が手につかなくなってくる
これはまずい

本人は随分思い悩みます。
その時の心情を正直に書き留めたのが
この手紙です。

渡されなかった手紙
実は、この手紙渡されていません。

平成6年、禮子はガンの宣告を受けます。
そして2年後、光一を残して帰らぬ人となります。

囲碁棋士って棋譜というのをつけるそうです。
細かな対戦記録

光一は死後、禮子のつけた棋譜を整理していました。

そして、この手紙を見つけるんです。

・・・

こんなことってあるでしょうか
飾らない
そして、渡されなかった手紙

それほどまで・・

初めて知った気持ち

なぜ渡さなかったのか
渡せなかったのか
光一には全てが分かったと思います。

彼女の人生の全て。

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