[平将門]5 桔梗、無事でいてくれ

[平将門]1 父の死。頼んだぞ。
[平将門]2 桔梗どのにございましょう。
[平将門]3 合戦が始まる
[平将門]4 京の都で裁判。その結果は
の続きです。

悪い予感が
8月のある日
弟の将平が、馬をとばして、豊田に報せに来た。

兄者、ただ事ではない。

なんだ慌ただしく

羽鳥の良兼が山に兵を集めて、水守の良正と何かを企んでいるらしい。

相手にするな。こっちには勝訴になった文書がある

それ以上の話は、妻の桔梗に聞かせたくないと、外に出た

すると、人々が噂を口々にしている

気をつけなされい
二千の兵がこちらに向かっているらしいですぞ
子飼いの渡しを彼らに断たれたら、かなり不利になりまする
急いで行かれませ

将門は急いで具足を身に付けた。
弟たちも、連絡を取り合い、瞬く間に、数百騎

子飼いの渡しを守れっ

この頃の地侍は、純然たる武士はほぼおらず半農半武
鍬を刀や弓に持ち変えた

遅かったか

渡し口を完全に取り囲まれていた。

良兼、出てこいっ。今日は俺と勝負だ

一騎討ちを望んだが、のっては来ない
多くの矢が将門めがけて飛んできた。

ここは、一旦引いて、体勢を整えよう。
あまりにも急な出来事だった。

ところが、肝心の将門自体に覇気がみなぎって来ない
自分でも
どうもおかしい

実は、この時将門は脚気を患っていた。
ともすれば、逃げ回っている

呼応するように、将門軍は押され
ジリジリと退却していった。

将門の豊田の本拠まで押され
一の柵、二の柵に火がついた

炎は、桔梗たちの住む北の殿まで迫ろうという勢い

弟たち、将頼、将平、将武らが懸命に防戦し
何とかくい止め
少しずつ押し返す

ただ、炎の勢いが止まらない。
いよいよ、北の殿に火が移った

桔梗 桔梗ーーっ

もはやこれまでか

煙の中から、郎党の梨丸が泳ぐようにして出てきた。
安心なされい
桔梗殿は、お子とともに脱出なされました。

その頃、桔梗と乳飲み子は、牧の馬小屋の中に身を潜めていた。

老臣多治経明は、馬小屋にまで火が迫ってきたので、
桔梗と乳飲み子を馬に乗せ、将門の元へと向かわせた。
そして、そのあと静かに自刃した

桔梗、無事だったかぁ

こうなっては、散り散りになって身を隠し、再起を図るしかございません。
しばらくは妻子とともに逃げ回っていたが
船着き場までたどり着き、妻子を船に乗せた。

将門様・・

これが最後の別れになるかも知れなかった

行きたくありません。

頼むっ

船を押した。


じとじとと長雨が続いた。

山蔭に穴を掘り、当面の隠れ家を作った
そこで将門は横たわって動けなくなった。
脚は樽のように太く、指で押すと深く沈んだ

ただ、妻子の無事を祈る日々

そこに、父の友人、菅原景行がやって来た。

これは治らぬ病ではない
わしも以前同じ病にかかった事がある
その時の薬が手に入ると思うから、届けさせましょう。

かたじけない

数日後、薬が届いた
薬を煮ては、毎日飲み続けた。
驚くほど尿が出るようになった。
すると、気分が際立ってきた。

俺は治るぞーっ

山にこだまし、もういっぺん聞こえた。

続きは、シリーズの次回にね

[歴史]シリーズはこちら(少し下げてね)

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