[ことば日本史] 転んでもただでは起きない。

「ことば日本史」平安時代から

受領(ずりょう)
平安時代の地方の政治は、受領(ずりょう)によって行なわれていた。

受領とは、平安時代以降の県知事さんみたいな感じ。
律令制下では、国司四等官[長官(かみ)・次官(すけ)・判官(じょう)・主典(さかん)]がそれぞれ国務に関する責任を分担していたのだが、
九世紀に入るとその体制が崩れ、実際に赴任した国司のうちの最上席者、
すなわち受領に権限が集中してゆくようになった。

平安時代後半以降には、受領はふだんは任国にはおらず、
目代を派遣して国務を執り行わせ、
自分はごく短期間だけ国に行くというような状態となる。

このあたりの何度か変わっていく地方政治の仕組み
歴史検定の時、ずいぶんやったなあ

転んでもただでは起きない
信濃守(しなののかみ)藤原陳忠(のぶただ)は、受領としての任期を終え、
荷や人をのせた馬を多数つられて、都へ帰る途中の出来事

馬が足を踏み外して底に転落した。
底知れぬ深い谷で、生い茂ったヒノキやスギのがはるか下に見下ろせるほど

これはとても助かるまいと思われ、家来たちはおろおろと騒ぎ立てるばかり。

ところが、はるか谷の底から、かすかな呼び声が聞こえてくる。

生きておいでだぞ

綱を下ろせー

良かったあ。お助けせねば

綱を下ろして、手応えがあったので引き上げようとしたが
人一人にするとえらく軽い。

引き上げてみると、いくつかの平茸

何これ、どういう事?

もう一度下ろせー

今度は本人
そして綱を持つ手のもう片方で、平茸をありったけ抱えている

谷底に落ちたとき、わしは馬の後からくるくる回りながら落ちていった
たまたま木の枝が入り組んでったところに落ちかかったんじゃ
ひと息ついて、ふと見れば、その木に平茸がいっぱい生えておるではないか。
これをこのままにする手はない。手の届くかぎり取って、
上げさせたというわけだ。

まだ残っていたなあ
ああ、残念。大損じゃ。

さすが、たいしたものでございます

これは「今昔物語集」にある受領の話。
当時から「受領は倒るるところに土をつかめ」といわれ
強欲で傲慢なのが 当然とされていた。

この受領の強欲な姿勢をいうことわざが一般的なものになったのが、
「転んでもただでは起きない」である。

[ことば]シリーズはこちら(少し下げてね)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です