[百人一首]59 やすらはで~、ちょっとホッとするね

やすらはで  寝なましものを  さ夜ふけて
かたぶくまでの  月を見しかな

ためらわずに寝てしまえばよいものを 夜は更けて
傾くまでの月を見たのです

赤染衛門
赤染衛門(あかぞめえもん)は、中宮彰子(ちゅうぐうしょうし)に仕えていた。
また彰子ですね
どれだけ豪華な人達を揃えてるんでしょう。

赤染衛門って女性だったんですね。

歌は若いときからとても巧みで、かの紫式部も、紫式部日記で赤染衛門の事を

歌人ぶったところがなく、歌に風格があって
こちらが恥ずかしくなるほど、どれも立派だ。

みんなに好かれるとても良い人

周りのそうそうたる豪華メンバー全員と仲が良い。

紫式部、清少納言、和泉式部

紫式部、清少納言は性格が全く逆で
仲が良いとはとても言い難いのに
間に赤染衛門が入ればうまくいく
さらに、ちょっと変わった和泉式部まで

ニュートラルなんだね

しかも、妻としても評判が良い
模範的な内助の功

さらにさらに
母としても理想的

非の打ち所なし

鑑賞
これ、自分の事じゃないんですって
代作。
妹の代わりに作ってあげた。

藤原兼家の長男、道隆

必ず行くからね

にもかかわらず現れない。

来ないなあ

月見て

まだ来ないなあ

あんなに月も傾いちゃった。
それなら言ってくれれば
さっさと寝たのに。

百人一首の恋の歌って
うまくいかなかった場合は
ねちねちしたのが多いけど

これは、なんだか可愛い感じがするよね
まあ、自分じゃないからなのかな

やっぱり性格の良さがベースにあるから

ほんまかいな
言うてえな
それやったら寝たがな

ちょっとあっけらかん。

[百人一首]58 有馬山~。紫式部の娘

有馬山 ゐなの笹原 風吹けば
いでそよ人を 忘れやはする

有馬山の猪名の笹原に風が吹けば
さてそうですよ
あなたを忘れるはずがありますか

大弐三位
大弐三位(だいにのさんみ)は紫式部の娘になります。

このあたりの超豪華な人達はみんな彰子(しょうし)皇太后に仕えています。
大弐三位も、親子共々仕えました。
母とは、14~5歳で死に別れましたが
どっこい、親譲りの美貌と才能
そして持ち前のバイタリティで、仕事も認められ
どんどんステップアップしていきます。

恋も仕事も一生懸命!

太宰府の長官、高階成章(たかしなのなりあきら)と、
幸せな結婚を手に入れます。

鑑賞
最近、音沙汰ないじゃない。
どうしたの?

いやいや、君の方が心変わりしたのかと思ったよ

こんなやり取りの後の返歌です。

これすごいです。
言いたいことは、「人を忘れやはする」だけ
忘れるはずないじゃないですか。

その前に色んな物がくっついて
全体としてのイメージで
とても爽やかに
想いを伝える。

「人を忘れやはする」の前の「そよ」
それよそれ、みたいなことで
丁寧に言うと「あなたの言った事について言わせていただくと」

この「そよ」を風の音にイメージして、前の歌枕が存在する。

有馬山って兵庫県の有名な温泉地です。
個人的な話ですが
有馬に親戚がいます。
「有馬のおばちゃん」

猪名は兵庫県ではあるが、実は、有馬とは結構距離が離れている場所。
笹の原っぱで有名。

じゃあ、猪名の笹原だけで良いよね

ところが、昔から
有馬山と猪名って、なぜかペアで、歌枕として使われる事が多い。

さあ、なーんで?

ヒントは

なすがママなら
きゅうりはパパ






はい
言葉遊びですね

有りと否(いな)

私の心が離れたですって?
いえいえいいえの いなの笹原
ありあり有りの 有馬山
ってね。

色んな技巧や遊びを取り入れつつも
結局はコテコテ感がなく仕上がっているのが
やっぱり「そよ」
その前の「いで」は感嘆符だから
ああ、そよそよ

短歌って、品格というか風格というか
目の前にどれだけイメージをさせられるかが勝負ですよね

この歌返されたら
ああ、いらんこと言っちゃったなあ
と、素直に反省することでしょう。

まだ、おかしな事言うようなら
とっとと、別れておしまいっ

[百人一首]57 めぐりあいて。最高峰、紫式部

めぐりあいて 見しやそれとも わかぬまに
雲隠れにし 夜半(よわ)の月かな

久しぶりに会ったけれど 見分けもつかないうちに雲隠れした
夜中の月のように たちまち去っていってしまったなあ

紫式部
百人一首、このあたりは有名人のオンパレードですと
言っておりましたが
いよいよ、そのなかでも最高峰
知らない人はいませんね

紫式部
源氏物語の作者ですね

2000円札でも有名です。

随分昔に途中まで読んだだけですけど
みなさん、どの辺りが印象に残られてますか
私は、末摘花のところ以外一切記憶に残ってない
逆に言うとそれくらい強い印象でした。

末摘花
大輔の命婦(たゆうのみょうぶ)という女房が、
今は亡き常陸宮(ひたちのみや)に一人娘がいることを源氏に話す。
彼女、末摘花(すえつむはな)は心細く暮らしており、
誰とも会わず琴だけがお友達

そんな話を聞いちゃうと気になって仕方がない光源氏

こっそりと、琴の音を聞きに行く

下手ではないけど
取り立てて、人の心を打つというほどのものではない

逆にそれが気になるんですけど。

人の気配を感じて振り替えると、
恋のライバル頭の中将

光源氏の様子がおかしかったので
後をつけてきた。

頭の中将もその時初めて琴の音を聞いただけで
顔も見たことないけれど
ライバル心に火がつく

光源氏も頭の中将も、手紙攻勢
でも、極度の恥ずかしがりの末摘花は既読スルー

何ヵ月もその状態

もう我慢できない。
大輔の命婦に言って、とにかく会わせてくれと。

障子越しに対面したが、末摘花は何の言葉をも発しない
あまりの無反応ぶりに痺れを切らした源氏は、
障子を開けて中へ入ってしまう。

一晩過ごすんだけど
どうにも腑に落ちない
女性と夜を共にした気がしない。

気持ちが乗らないけど
歌を送る
初めて、返ってきた返歌
これがまた
歌の内容も、字も
ひどいのなんの

そのあと、紫の上と暮らすようになって
末摘花とは縁遠くなる

でも、このままって訳にも行くまいと
訪ねていく。


雪の降った後の雪明かりで明るい中で
末摘花の顔を見た

ぎょえーっ
不細工。
それも並の不細工さではない
鼻の頭は真っ赤で高いくせに垂れて象のよう。

徹底した醜さに
色恋関係無く
面倒を見たくなってくる
様々な品を何かというと贈るようになる

末摘花も極貧だったのが
ある程度生活も安定し
極度の人見知りも少し解消されていく。

どうですか
というあらすじなんだけど
衝撃を受けましたね
なんという物語なんだと。
それ以降、源氏物語と言えば末摘花を思い出す。
ただのプレイボーイという印象が一気に覆った。

紫式部
平安文学の最高傑作
別格の実力でありながら
性格は内向的。
子供の頃から超天才で中国の書物も楽々読みこなしていたというから
実際の人付き合いではなく
文学の世界にその才能の限りを出し尽くしたのかも

源氏物語の評判は、
当時の政界のナンバーワン、藤原道長の聞き及ぶところとなり
娘の彰子(しょうし)の女房として宮廷に出仕することとなる

出ましたね彰子
どれだけ有名人を集めるねん

その時の話が後に紫式部日記となり
まあ、赤裸々に

鑑賞
さあ、この歌です。
久々にあったのに、あなたはあっという間に去っていったのね
恋の歌かと思いきや
相手は女友達なんですって。

彼女は女友達がとても多かった。
その付き合いの中から、文学的素養を育んでいったのかも知れません。
同性の女性を思っての歌って初めてですね。
なんだか新鮮です。

[百人一首]56 あらざらむ~和泉式部

あらざらむ この世のほかの 思ひ出に
いまひとたびの あふこともがな

生きてこの世に在ることも望めないような
状態になってしまいましたので、
あの世へ行ってからの思い出ぐさにするために、
せめてはもう一度の、逢瀬があるようにと、
切に切に望んでおります。

百人一首シリーズ、この辺りは有名人が目白押し
今日は誰もが名前を聞いたことのある、和泉式部になります。

鑑賞
この時、生死の境をさまよったらしい。
「あらざらむこの世のほかの思ひ出に」しなければならないほど、
危なかった。

命が尽きる恐怖と戦いつつも

「あ」らざらむ この世のほかの 「お」もひ出に
「い」まひとたびの 「あ」ふこともがな

5句のうちの4句までが、母音ではじまる柔らかな声調で、
せっぱつまった内容とは裏腹に、
何となくゆったりした、おおらかさをもたらしている

和泉式部
和泉式部は家柄的にはそこそこというか、いまいちというか

和泉守橘道貞(いずみのかみたちばなのみちさだ)と結婚して
「和泉式部」と呼ばれるようになり、
小式部内侍(こしきぶのないし)を生んだ。

小式部内侍って名前覚えておいてくださいね。
第60首で出てきます。

宮廷生活は仕事がら見てきているので
華やかな貴族生活へのあこがれが強くなる

早くから歌人としての名声も高かったので
常に注目は浴びている。

そんな中で、
好色の貴公子為尊(ためたか)親王が声をかける。

夫も子もある身でありながら、
恋の炎に火がつく。

いけませんわ。

怒った旦那さんは離縁。
親からも勘当。

でも、尊親王はちゃんと奥さんとして向かい入れ
終わり良ければ全てよし、ちゃんちゃん、
と行きそうだったんだけど

なんとなんと、為尊親王
2年後に死んじゃいます。

あんなに全てを投げ打っての恋だったのに、あわれ未亡人
かわいそう
と、なりそうですよね。

そうならないところが、和泉式部のものすごいところ

為尊親王の弟宮の敦道(あつみち)親王

美貌のプリンスと年上の女の新たな恋が始まります。

初めは人目を忍んでいたんだけど
どんどん、敦道さんが夢中になっちゃって
お屋敷の一間に迎入れる

ったって、別の間には、奥さんいます。
奥さん怒っちゃって、お屋敷を出ます。

大スキャンダル。

そのへんの事が「和泉式部日記」として書かれています。

この本売れるでしょ。

まだ続きが。

なんと、敦道さん、
4年後に死んじゃいます。

いよいよ、静かに?
いえいえ
あふれでる才能は回りが放っておきません。

あの道長のお声がかりで
一条天皇中宮の彰子(しょうし)(道長の娘)に仕える。

覚えておいて下さいね。
この彰子さん
これからの、超豪華シリーズ、彰子さんを中心に展開されていきます。

道長、よっぽど和泉式部の事が気に入ったんだね
旦那さんの世話までしてくれる。
自分の信頼できる部下、
藤原保昌(やすまさ)を紹介してくれ、結婚

えーっと、4度目?

保昌は、50歳くらいでかなり年上。
度量のある人で、広い心で包み込んでくれる。
一緒に、任地、丹後に下る。
晩年の詳しい消息は分かっていないが
長きに渡って添い遂げたらしい。

黄金期
田辺聖子さんは絶賛している。

女流文学の黄金期にあって
ひときわ光輝く星であると

言葉の使い方、発想の仕方
誰にも真似のできない独特なものであると。

例えば、この百人一首の歌にしても
あらざらむ この世のほか
って
もうすぐいなくなってしまうであろうこの世、とは別のところ
すなわち、あの世
あの世で思い出にしたいから。

こういう言葉使いは、彼女独特らしい。

伝統の枠におさまりきらない
率直な心の叫びをそのままつづった歌

もの思えば 沢のほたるも わが身より
あくがれいずる 魂(たま)かとぞみる

物思いにふけっていると、沢のほたるも、私の体から抜け出した
魂のように見える。
あれ、あのように悩ましげにふわふわと。

紫式部も
あんなの歌じゃないと言いつつも
何か一つは必ず魅せられるところがあると一言。

勝手な推測
何の根拠もない、私の勝手な推測。
単純な私の好みかも知れないけど。

けらっけら笑う女性だったんじゃないかな。

ここまで、男性に愛され続ける女性って
何かあるに違いない

娘にも言っているんだけど
着飾る必要も、化粧も要らない
けらっけら笑え。
大モテだぞ。

男の心は鷲掴みにされる

で、歌なんか贈られちゃったら
ああ、もうあかん。