[日本語の発音] ハヒフヘホはパピプペポ
の続きです
奈良時代
ハヒフヘホがパピプペポ
サシスセソがツァツィツツェツォだったというお話を前回しました
もうひとつ現代と大きく違う点が、母音の数です
今はあいうえおの5つの母音です
奈良時代には、なんと母音が8個もあった
学生時代に英語を覚えるとき「あ」だの「お」だのが何種類もあったのを思い出します
アメリカ人はなんちゅうめんどくさい事をしとるんか、かわいそうに
と思ったのを思い出します
奈良時代とはいえ、日本人な訳だから
そんな器用なこと出来るわけ無いんじゃないか
ただ、母音が5つ以上あるのって、現代にしても、奇っ怪な事では無いらしいんです
名古屋では8母音ある
その内訳は、既存の「あ・い・う・え・お」の五母音に加えて、「うまい」「うるさい」等に由来する母音連続[ai]が融合して成立した[æ:](ウミャー、ウルセァー:英語のhatやcatの母音で[a]の口の形で[e]を発音する)、「あつい」「うすい」等の[ui]に由来する[ü:]([u]の口の形で[i]を発音する)、「おもい」「おそい」等の[oi]に由来する[ø:]([o]の口の形で[i]を発音する)の三母音が加わった八母音である
有名な海老フリャーですね
では、なぜそんな事が分かったかですが
前回もお話した万葉仮名です
その事に最初に気づいたのが、江戸時代の本居宣長(もとおりのりなが)
さすが大先生
その後、昭和になって、東京大学の有坂秀世がかなり詳細に
どういう場合にどの母音が使われるか等の研究をした
しゃべって聞く事を考えると
すんなり理解してもらうためには同音意義語が少ない方が良い
もともと発音は多い方が語意が伝わり安いと言える
奈良時代が過ぎて平安時代になると、8母音がなくなるんだけど
便利なんだったらなぜなくなったんだろう
実は聞いて同音意義語の勘違いをなくすためには
発音を多くする以外にもうひとつ方法がある
単語の長さを長くして、同音意義語じゃなくしてしまえば良い
上代以前の古い段階では、語の音節数はおおむね一音節か二音節であった。
それが次第に長くなっていく
今では同じ「ひ」「こ」「と」を微妙な発音の違いで、甲乙の二種類使い分けていたのを変える
「ひ甲(日)→ひ・る(昼)」、「ひ乙(火)→ほ・の・ほ(炎)」、
「こ甲(子)→こ・ども(子供)」、「こ乙(此)→こ・れ」、
「と甲(戸)→み(水)な・と(港)」、「と乙(常)→と・こ」「こ乙と乙(言)→こと・ば(言葉)」
のように接頭辞や接尾辞を付けたり、語を複合させたりしてことばが長くなって
聞き違いがなくなっていった
発音の違いを使い分けるのが、結局大変だったんでしょうね
それでは次回、平安時代の発音に入っていきます