[百人一首]49 みかきもり~、ここに置くのね

みかきもり 衛士(えじ)のたく火の 夜は燃え
昼は消えつつ 物をこそ思へ

御垣守(みかきもり)である兵士のたく火が、夜は燃え昼は消えているように、私の恋の炎も、夜は燃え昼は消え入るばかりに、物思いに沈んでいる。

大中臣能宣朝臣
大中臣能宣朝臣(おおなかとみのよしのぶあそん)は
代々伝わる伊勢神宮の最高責任者の家柄。
自分も祭主をつとめている。
朝臣もついていて、位も高いと思われる。

第61首の伊勢大輔(いせのたいふ)のおじいちゃんでもある。
代々伊勢神宮だから、伊勢なんですね。

鑑賞
まずは、みかきもり、と衛士。
御垣守(みかきもり)は、宮廷を警護するガードマンのこと
衛士は、その内、特に出張で都に来ているガードマン。
御垣守、衛士は夜にかがり火をたく。
電灯なんてないので、そうしないと真っ暗でやられ放題。

恋を「不安定」で表現しています。
思いが募って、もうどうにかなってしまいそう、って歌は多いんですが
この、不安定ってところに目をつけたのは素晴らしい。

ちょっと、あれひょっとして、みたいなことがあると
嬉しくて嬉しくてやたらにハイテンション。
この世の春は私のもの!
ところが、いやあ、ダメなのかなあと思うことがあると
どどーんと落ち込む。
この世に春はない!

これを、毎日ついたり消えたりのかがり火に例えたんですね。
思ひ、って「ひ」なので「火」に例えるのはよくあるんだけど
燃えて消えてにしたのは、見事です。

リズム
この歌のいいところは、リズムです。
すうっと最後まで流れるように読める。
衛士「の」たく火「の」でリズムを作り
夜昼では、「・るは・え」で意味だけでなく音も対比させる。
そして、も、の配置で全体のリズムを作る

言われてみれば、かなり考えているんだなあ。

対比で
実は、作者、大中臣能宣朝臣だけでなく
選者、藤原定家の妙もある

第48首の
風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ
くだけて物を 思ふころかな

と、この

みかきもり 衛士(えじ)のたく火の 夜は燃え
昼は消えつつ 物をこそ思へ

を対比できるように並べて置いたこと
物を思ふシリーズ行きます。
どっちが好きですか?って

一方が水で、一方が火。
どっちもよせては返すんだけど
前の方は、何度も何度も、強くぶち当たる感じが強調されているけど
後ろの方は、燃えては消えるという山谷山谷が強調されている

すごいわ、藤原定家!

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