[百人一首]90 見せばやな

見せばやな 雄島のあまの 袖だにも
ぬれにぞぬれし 色はかはらず

見せてあげましょうか、私の袖を
松島の雄島の漁師の袖ですら
どんなに濡れても、色までは変わっていないのに

殷富門院大輔
殷富門院大輔(いんぷもんいんのたいふ)は
例によって、本名は分かっていません。
藤原信成の娘で、後白河法皇の娘、亮子内親王(後の殷富門院)に仕えた大輔ということです。
歌人として大変有名。
数多く歌うタイプで「千首大輔」と言われているほどです。

鑑賞
見せばやな、は関西で言うと、見したろか

雄島というと松島の雄島の事
京都に住むお嬢様ですから、仙台の松島に行ったとは思いがたいですが
いわゆる歌枕
雄島というと、歌の世界では、はいはいはいと通じる訳ですね

あまって、海女だけじゃなく、当時は漁業関係者全体を指しますから
普通に考えると、漁師って事になるんですが
女性が詠んでいるという事も考え合わせれば
海女をイメージしても良いかもしれません。
海女は袖どころじゃなく全部濡れますけどね

袖だにも、って言っています。
袖ですら。
てことは、比較対象先があるって事です。

松島や 雄島の磯に あさりせし あまの袖こそ かくは濡れしか
(あなたに冷たくされて、私はこんなに泣いています。
松島の雄島の磯で漁をする者の袖でも、これほど濡れていないでしょう)

こういう歌があるんですね
いわゆる本歌取りって手法です。

皆さん知ってますよね、ほらあの「松島や」の歌、って訳です。
本歌取りの場合は、同じことを歌っては意味がありません
元はこうですよね
でも、今回はね

さあ、何が違うのか
色です。

元は色は変わっていませんよね、濡れただけ
今回はね、濡れた上に色まで変わったのよ
ほらほら見てちょうだい、な訳です。

ここで、もうひとつ前提知識が必要になります。
漢詩です。
漢詩の世界では、女性が男性にひどい目に会わされた場合
血の涙が流れます。

ここまで分かっている人は、なるほどとにんまり

漢詩というのがすごい点で
当時の女性は紫式部や清少納言クラスにならないと漢詩には精通していない。
漢字は男性、女性はかな、という大まかなイメージね

この歌が披露されたときは
ほおおおっ
と大きな賞賛の声をあげた事でしょう。

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