江戸の地名と植物

「徳川家の家紋はなぜ三つ葉葵なのか」という本を読みました。

稲垣栄洋(ひでひろ)さんが書かれた本です。

この人、おそらく私が大好きなラジオ、安住紳一郎の日曜天国に以前出演していた人です。
雑草の専門家。
雑草たちが、自分達が生き残り増えていくために、どういうことをしているか
熱く語って強く印象に残っています。
その時うまくお名前を聞き取れなかったので
気になっていながらもそのままになっていました。

今回、図書館で偶然この本を借りてきて
巻末の著者紹介を読んで、
あっこの人だ!

「徳川家の家紋はなぜ三つ葉葵なのか」は
植物の視点から戦国時代や江戸時代を解き明かそうという意欲作

このあと、少しずつ色んな話を紹介していきたいと思いますが、
今日は大きく江戸という都市と植物の関係です。

江戸を選んだ理由
徳川家康が、豊臣秀吉からいわば嫌がらせでもらった江戸の土地
当時は単なる草ぼうぼう

いいでしょう、耐えましょう

晴れて関が原の戦いに勝利し天下人
どこでも好きなとこ取って良い訳です。

秀吉の大阪を横取りしても良いし
元々の駿府でも良い

でもそうしなかった。
不思議です。

草ぼうぼうが気に入ったということです。
言い方を変えると、土地開発、都市開発にワクワクした
何もない、イコール、無限の可能性を感じたと言うことです

後から考えると、こんな最適な地はないですね
日本の真ん中で、こんなどでかい平地はどこにもない
家康、天才!

地形
当時の江戸はどこまでも広がる荒れ野原だったわけですが
大きく言うと、山手と下町

今で言うと、京浜東北線より西側が
富士山の火山灰が堆積してできた武蔵野台地。
山手です

それより東側は低地で沼地が広がっていた。
下町です。

どうしたか
ずぶずぶだった下町は、そこそこの水加減にして
田園開発を出来るように
それまで利根川が東京湾に流れ込んでいたのを
あんた邪魔、と工事して流れを変えちゃった
世に言う利根川東遷
あんなどでかい川を作り変えようって
尋常じゃない発想ですね
この利根川東遷、あまりにもすごいことなので
いつかちゃんとまとめますね

カラカラだった山手には川を掘って作り、こっちも田園開発
玉川上水ですね

さらに、まだ足りないなあ
よし、埋めちゃえ
台地の土を持ってきて、東京湾に埋めちゃった

恐るべし


前置きが長くなりました。
ここからが本題。

草ぼうぼうとは言っても
山手の台地と下町の低地では草が違います。

台地ではススキ。

低地ではヨシ。

大きくはこうなんだけど
ところどころ生えているものも、その量も違うので
一つずつ行きますね

浅草
ここは低地ですが、それほど生えていなかった
で、浅草。

一番分かりやすいのは、その近くの吉原
ヨシの原っぱね

足立区も「葦立」(アシダチ)
えっ?ヨシじゃないの?アシ?

良いツッコミです
以前名字の吉田さんの話の中で話したことありますね
山田さん、吉田さんは努力のたまもの

元々はアシだったのね
でもアシは「悪し」になるから何だかやだな
別名付けようか
どうせだったら「良し」にしちゃえ

発想の仕方が良いですね

何と今は、ヨシの方が図鑑に載っている標準和名です。

蒲田は、ガマが生えていたから

ちなみに、江戸名物の鰻の蒲焼きは、蒲を焼くと書きますね
昔は開かずに、筒切りにしてそのまま串に刺したんです。
とすると確かにそっくりになりますね

蒲田に近い大井は、湿地に生える藺草(イグサ)がいっぱい生えていたから大藺

杉並区には、そのものズバリの「井草」っていう地名があります

井草の近くには荻窪がある
それもススキに似た、オギが生い茂った窪地だから
ススキは乾いた土地、オギは湿った土地
ススキは髭みたいなのがピッと一本ずつ出ています。

役に立つ
ヨシにしてもススキにしても、今は雑草扱いだけど
昔は貴重な資源だった
ヨシやススキを表す漢字は「萱」(カヤ)と「茅」(カヤ)
耐久性の高いススキは、かや葺き屋根の材料として使われた。

ススキが確保できないときは、
しゃあないなあ、イネで我慢するか

稲の藁は、わら葺き屋根
ススキはイネより高級品だったのね

萱は屋根の材料以外にも、家畜の餌や、田畑の肥料になったので競いあって萱を刈った
最初に刈った萱は殿様に献上されるほどの貴重品。
ヨシの方は茎の中が空洞で軽いから、よしずなどの材料になった。

家康が草ぼうぼうを気に入った理由が分かってきましたね。

茅場町は、萱が生い茂る場所で、萱を扱う業者が集まっていたところ

渋谷区の千駄ヶ谷は、萱がいっぱい取れたところ
「駄」というのは重さの単位
一頭の馬が一度に運べる重さが一駄
千駄も萱が取れたから、千駄ヶ谷

ちなみに文京区の千駄木は雑木林で、千駄も薪が取れたから

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