「ことば日本史」の平安時代です。
前回、弘法大師の弘法も筆の誤り、の話をしました。
弘法大師空海や、伝教大師最澄、最澄の弟子の円仁や円珍が広めた密教
密教は、呪術という要素が強いものです
その呪術のなかには、簡単なので「お呪い(まじない)」として広く行われるようになったものもあり、そこから生まれたのが、次の言葉である。
つまはじき
これは「弾指(だんし)」という呪術からできた言葉。
親指以外の指を握って、拳の中心に力を集めるようにしながら、
親指で人差し指の脇を 押さえておいて、人差し指を勢いよくはじいて伸ばすと、
親指が中指の脇にあたって音を立てる。
それが「弾指」
この音には魔よけの呪力があるとされた。
やってみましたが、大した音は鳴らないけどなあ
ちゃんと鳴っている動画はこちら
承平5年(935)頃に成立した紀之の『土佐日記』
一月二十七日に、「今日は一日中風がやまなかった。爪弾きして、寝た」とあり、
その頃には僧ではなくとも 「はじき」という名のまじないとして
ふつうに行っていたことがわかる。
この例からもうかがわれるように、災厄を払う呪いを行うのは、
ことが思い通りにならずイライラしているときでもあって、
そこから他人への非難や軽蔑をしめす動作ともなった。
動作もいつからか、人差し指か中指を曲げて爪を親指の腹で押さえ、
力を入れたところで、親指を離して、ピンッとはじくようになった。
鼻くそを飛ばすときの動作でしょうか
拳に力を入れるということがなくなって、軽い動作になったわけだが、
そんなふうに指でピンッとはじくことは、
いかにも他人を馬鹿にしたり、除け者にしたりするという意味に似合っていて、
そういうことを「つまはじきにする」というようになったのでしょう