[三十六歌仙]27 藤原清正。代理で恋の歌を送っときました

藤原清正(きよただ)

天つ風 ふけひの浦に ゐるたづの などか雲居に かへらざるべき

天つ風が吹くという名の吹飯の浦にいる鶴が、どうして雲の上に帰らないことなどあろうか。
――そのように、私もいつかは再び昇殿を許されるであろう

今で言うところの和歌山県知事として赴任するとき
紀伊の歌枕「ふけゐの浦」に言寄せて、いつか帰京し昇殿を許されることを願って詠んだ歌。

和泉国の歌枕に吹飯の浦(ふけいのうら)があるが、
昔から、紀伊国の歌枕吹上(ふきあげ)の浜と混同されています。
この歌でも、吹上(ふきあげ)の浜と勘違いしての歌。
吹上の浜は、六義園でも再現されている有名な場所ですから。

普通は4年ほどの任期なのですが
この時は10ヵ月ほどで京都に戻っています。
この歌が効いたんでしょうか

もうひとつ不思議な話があります
『忠見集』によれば、清正が紀伊守となった頃、
壬生忠見が清正に代わって少弐命婦に贈った歌とある

本人が留守の間に
代理で恋の歌を送っときましたよ、と

無茶苦茶親切な人ととらえるべきなんでしょうか。
これが恋の歌だとすると
鶴が雲の上に帰るというのは
またあなたの元へ伺いたい、というようなことになるのでしょう。

天つ風、雲居と来ると
やはり百人一首のこの歌ですね
天つ風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ をとめの姿 しばしとどめむ
空吹く風よ 雲間の帰り道を通せんぼしておくれ
素晴らしい舞を舞ってくれた乙女の姿をもう少し見ていたいから

もうひとつ、天にからんだ清正の歌

秋風に いとどふけゆく 月影を 立ちな隠しそ 天の河霧
(天の川の川霧よ、秋風によって深まる月の明かりを隠さないで)

天の川に霧がかかっているとは知りませんでした。
とても美しい情景です

[短歌]シリーズはこちら(少し下げてね)

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