[百人一首]12 天つ風

天つ風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ
をとめの姿 しばしとどめむ

空吹く風よ 雲間の帰り道を通せんぼしておくれ
素晴らしい舞を舞ってくれた乙女の姿をもう少し見ていたいから

おはこ
出たっ 出た出たっ
天津乙女ですね。
これをおはこにしている人はかなり多いんじゃないでしょうか
紛らわしい札がないから、覚えやすいしお手付きもしにくい。

母さんが昔、この札が出る度に、
天津乙女って宝塚女優がいるんだよって毎回言う
そこから話が広がるわけでなく、それだけ
はい、聞きました、って言うんだけど毎回毎回。

こいつアホか、と思いつつ
可愛いかも、と思ったりもした


あっ、これ
母さんじゃないです。
天津乙女です。
(わかるわっ)

僧正遍照
俗名は、良岑宗貞(よしみねのむねさだ)

超美男で、仕事も出来て、ユーモアもあって、風流も解し、しかも性格が良い
パーフェクト人間。
当然モテモテ

仁明天皇に重用されたが
その仁明天皇が崩御
そのお葬式の晩、宗貞はふっと姿を消す。

どこ行った、どこ行った。
みんなは大騒ぎ
何せ超人気者

探せど、どこにもいない
仁明天皇のあとを追ったのではあるまいか
はたまた、出家?
あるいは、北朝鮮に拉致。

宗貞を取り巻く3人の女性。
妻と二人の愛人

二人の愛人に「出家する」と打ち明けていた事が分かった

そんな、私は一切聞いていないのに。

なんで私には言ってくれなかったの
ずっと泣いて暮らす。

初瀬寺へお参り。
導師のお坊さんに
生きているならもう一度会わせていただけるように
仏様にお願いしてもらえますでしょうか
もし、死んでいるのなら
せめて夢の中に顔を見せてくれますまいか
どうぞなにとぞ・・

嗚咽であとが続けられない

実は、その隣の部屋にたまたま諸国を回っていた
遍照(へんじょう)となった宗貞が居合わせた。

妻の声に涙が止まらない
愛すればこそ、言わなかった。
言えなかった。
出家の決心が揺らいでしまう。

ああ、今ここに
すぐに出ていきたい気持ちを殺し
夜通し血の涙を流した。

小野小町が
こんなエピソードもあります。

小野小町が旅の途中、石上寺というところに立ち寄り、そこで一泊することにした。
すると、昔の知り合い、宗貞(遍昭)らしき人がいるらしいとの噂
人を通じて、歌を渡してみました。

「岩の上に 旅寝をすれば いと寒し 苔の衣を 我に貸さなん」

帰ってきた歌が

「世をそむく 苔の衣は たゞ一重 貸さねばうとし いざ二人寝ん」

今宵は石上寺で寝ることになりますが、石の上というくらいだから、たいそう冷たくございます。
石に苔はつきもの。
聞けば、僧衣は苔の衣とも呼ばれているそうですね
苔だと温かそうです。
僧衣を、私にお貸しいただけませんか

俗世を離れた苔の衣(僧衣)は、ただ一枚しか持ち合わせていません。
お貸しする訳にはいきませんが、
お貸ししないというのも、これまた薄情な話でございます。
どうでしょう
この一枚の衣で、二人一緒に寝るというのはいかがでしょう。

これはっ
このユーモア
まさしく宗貞に違いない

急いで出向くと
もうそこはもぬけのからでございました。

鑑賞
出家前の歌になります。

豊明かりの節会(とよあかりのせちえ)という行事に呼ばれた時。
選ばれた未婚の貴族の娘達が舞を舞うのがならわし
五節の舞姫と呼ぶ

起源は天武天皇の頃、天女が天から降りてきて、天皇の前で踊ったということにある
彼女たちは天女ということになります。

伝説の天女たちは舞が終わると、雲の間の路を抜けて、天に戻っていったと言います。
その道が、雲のかよひ路

この歌、彼女達にとっては一生の宝物になったでしょうね

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