練塀について考える。その1

(2022/11/6[日]の事です)

増上寺三解脱門特別公開
の続きです。

今は文化財ウィーク
増上寺へ向かうちょっと手前に、文化財ウィークののぼりが立っているお寺がありました。
三解脱門へ早く向かいたかったので、チラ見しただけでしたが
帰りはそこに寄ってみましょう

廣度院(こうどいん)
廣度院というお寺、増上寺の子院です
三解脱門のすぐ向かい

練塀(ねりべい)というのがあります。

国の登録有形文化財になっているそうです。
番傘をさしながら、練塀バックに写真も撮れますよ

ここでこのあと、ワクワクな時間が展開されます

中に入るといろんな練塀に関わる展示がされていて
副住職さん(おそらく西城さんと言われる女性の方)が解説してくれる

今年の3月から4月にかけて地中に埋まっちゃっていた部分なのかを港区教育委員会が発掘調査
出てきたのがこちら
塀に混ぜ込んである瓦

間知石(けんちいし)と言って、基礎となる石

ざっと写真とかも見て、はいはい谷中にも有ったなあ

前のグループさんへの解説が一通り終えた段階で、副住職さんの元へ向かいます。

谷中にもありますよね

築地塀(ついじべい)ですね

そういうと築地塀って書いてあった気がしますが
練塀とは違うんですか

ここから長く楽しい時間が始まりました。

何度か書いていますが
私がウォーキングするひとつの大きな目的がこれ
あるテーマについて、好きで好きでたまらないって人が
熱っぽく語るのを聞くのが大好き
本や資料を見てるだけじゃ絶対に味わえない時間
歩いて、たまたまそういう人に出会えないと無理
こちらも幸せになれる時間です。

江戸城建設の棟梁をやっていた甲良家(こうらけ)
そこに残されていた資料集
長い名前なので省略して「本途帳」と呼ぶことにします。
その本途帳の中に練塀というページがある

江戸城西丸・吹上の塀はおそらくこの図面
享和2(1802)年に三解脱門が大改修されているんですが
その時、周辺の塀も大きく作り替え
それを甲良家が関わったっぽい

となると、図面と同じ作り方でこの辺りにドドドっと
練塀が作られたのではないか

それって、この練塀も享和2年のものって言ってます?

副住職さん、ニコニコっと笑って
なら良いなあって夢が広がるんですよ

220年ものってことになるので、
その間に全面作り替えって十分ありますから

確かに夢が広がる
将軍でいうと、第11代家斉のころ
文化文正時代のちょっとだけ前です。

工学院大学の先生たちが書いていただいたのがこの復原図

興味深いのが断面
横側は外から見ると瓦の筋が入っているだけですが
本途帳の図面を見ると、長い瓦と短い瓦が組み合わさっている
そして、長い瓦にかかって中央から瓦がアーチ状に
これが何のためにこうなっているのか

副住職さんは、水をはける目的なんじゃないかと推察する

これは、分かる気がする
ここから私も一気に会話が盛り上っていきました

うん、分かる分かる
お城の石垣なんかは、外から崩れる事はない
長い間で中に貯まっちゃった水が外に石垣を押し出して崩れる
それを防ぐために中側の水はけを良くするための石の組み方が問題

基本的に上にも屋根があり、瓦が乗っかっているので、
それほど水が染み込むのかなとは思うが
220年持たせるためには重要な事なのかも
上の瓦同様に中にも瓦が何層かビッシリ敷き詰められていて
下には水は落とさんぞ、と言うことかも

中にポツポツ書かれているのは瓦で
土の中に瓦が混ぜ込んであります。
おそらく強度を増すため
どうもリサイクルだったと思われます。
瓦を捨てるのは勿体ないので。

それも分かります。
享和2年というのと一致しますね
瓦って江戸時代初期の頃ってあまり使われていない
そもそも瓦屋根って禁止されていますので。
度々起こる大火の消化活動のためには、家を壊すという方法で類焼を防ぎますが
その時に瓦があると危ない

ところが8代将軍吉宗の時にこの方針が転換される
やっぱり瓦屋根は火事に強いと分かってくるので逆に瓦屋根が推奨されるようになっていく

博物館で江戸の街並みがジオラマで作られていると
吉宗より前の時代かあとの時代かすぐに分かります
享和2年だと瓦はかなり使われている時期なので
リサイクルに回すというのは納得です。

このあとも、結局何のためにこういう構造の塀を作ったのか、とか
築地塀と練塀ってどうちがうのかとか色んな話で盛り上りますが
長くなりますので一旦区切りますね
続きは次回

[お出掛け]シリーズはこちら(少し下げてね)

練塀について考える。その1」への2件のフィードバック

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