平兼盛と壬生忠見、和歌の対決の行方は?

百人一首シリーズ
今回は趣向を変えて、
ふたつの歌(第40首と第41首)を並行しつつ紹介します

なぜそんなややこしいことをするかは、この後で話すとして
まずは歌

平兼盛(たいらのかねもり)
忍ぶれど 色に出にけり わが恋は
ものや思ふと 人の問ふまで

誰にも知られないように隠していたのに
私の恋心は顔に出てしまったようだ

壬生忠見(みぶのただみ)
恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり
人知れずこそ 思ひそめしか

恋をしているという私の噂が、早くも世間に知れてしまった
誰にも知られないように密かに思い始めたばかりだというのに

どっち?
皆さんはどちらの歌が好きですか

なぜこういう問いをするかというと
この二つの歌は村上天皇主催の歌合わせで勝負したからです。
内容は似ているので
テーマは忍ぶ恋
さあ、どうだ
って感じだったのかな

勝った方と負けた方、その後の人生のを大きく変える一大決戦になります。

もうちょっと噛み砕いて解説してみましょう

■忍ぶれど 色に出にけり わが恋は
ものや思ふと 人の問ふまで

忍ぶれど・・お馴染み忍ぶ恋ですね。誰にも知られないように隠していたのに
色にでにけり・・この場合は、顔に出ちゃったということ
ものや思うと・・恋に悩んでるんですか?と
人の問ふまで・・第三者を入れることで、思いの強さが伝わってきますね
倒置法を使っています。主語のわが恋は、を後ろに持ってきて
思わず色に出ちゃったことを先に強調している

■恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり
人知れずこそ 思ひそめしか

恋すてふ・・てふ は といふ が縮まった形
 している、という意味。てふてふ(蝶々)でおなじみ、チョウと読みます
わが名はまだき・・名は噂とか評判。まだき は 早くも の意味
思ひ初(そ)めしか・・思い初めで思い初めたばっかし、しかで なのに
これも、倒置法、上の句と下の句が倒置になっている

勝負は
両方とも素晴らしく、甲乙つけがたかった。
困った審査員、主催者である村上天皇の方を見た。

村上天皇は、忍ぶれど、を小さく口づさむ
忍ぶれど の勝ち!

勝った平兼盛は、喜びいさんで
まだ途中なのに帰っちゃう。

壬生忠見は、そもそも身分が低く、裕福でなかったので
天皇主催の歌合わせに呼ばれるなんて異例中の異例

第30首の
有明の つれなく見えし 別れより
暁ばかり 憂きものはなし
の壬生忠岑(みぶのただみね)の子供
この歌は古今集で最も優れた歌だと藤原定家が折り紙つきなくらいだから
歌人としての才能はピカイチ
古今和歌集の選者にも選ばれている
ただ、このお父さんも身分は低かった。

才能は引き継いでいるということですね。

田舎者の格好で出席するんですが
歌には絶対的な自信があった筈

この歌合わせにかけていたと言ってもいいだろう

なのに負けてしまった。
失意のどん底。
その後、今で言う拒食症になって命を落とす。

ってことになってるんですが
色々疑問がある

村上天皇
そもそも、村上天皇は忍ぶれど の方が良いと一言も言っていない
両方とも読み上げてみて味わってみてから考えようと思っただけかも

早合点の可能性が強い

そのため、後々、どっちの歌の方が良いと思う?
と、ことあるごとに話題に上る

藤原定家も、わざわざ40首と41首に並べてのせたのも
その意図があるだろう

拒食症
後々、何かと話題に登るのであれば
ドラマチックな方が面白い

ってことで、壬生忠見は拒食症になって死んだことになっちゃった

ほんとはそのあとも普通に元気に暮らしている

平兼盛と壬生忠見、和歌の対決の行方は?」への3件のフィードバック

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