春道列樹、山がはに~

山がはに 風のかけたる しがらみは
流れもあへぬ 紅葉なりけり

山の間を流れる川に、風がかけた「しがらみ(柵)」は
流れきらないで溜まっている紅葉だったよ

春道列樹
春道列樹(はるのみちのつらき)ってまあ珍しい名字
祖先が、大和の春道天王社にゆかりがあったことによる
現在の奈良県天理市にある和爾下(わにした)神社のこと

位としても、歌人としても特に目立ったことはなかったものの
百人一首に選ばれて急に有名になった。

鑑賞
しがらみというのがポイントですが
現在の、いやあ、しがらみが強すぎて、というそのしがらみではありません。

川の中に杭を立てて竹などを横に組み、川をせき止めるもの
今使うしがらみは、こっちの方が先で
束縛して引き留めるもの、に意味が転じていった。

あへぬ、は~しきれない、なので、
流れもあへぬ、流れようとしても止まっちゃってる

私が、この歌で好きなのは、風を持ってきたところ

あれ?何だろう、しがらみか?
良く良く見ると、紅葉だった。
このパターンは和歌の世界では何度か使われている。
正直、新鮮味はない。
もうひとひねり必要。

流れきらない紅葉だったよ、という種明かしは下の句にある
とすると、本来、風のかけたる、はしがらみより前に持ってきちゃいけない
クイズで問題を言う前に重大ヒントを言っちゃったようなもの

でも、犯人を川の流れではなく、風に持っていったことで
一捻り。

今からダジャレを言うぞっていうときのテクニックとしても
若干分かりづらいかなというときは
前振りをしておいて、分かりやすくしてから言います
後で解説するほど興ざめなものはないですからね

それと、同じなんです。
だから、この順番がベスト
風がしがらみを作るってどういうこと?
むしろ興味がわく

良く使われる、しがらみ=紅葉の図式を使いつつ
実は風を詠みたかった。

風のくせして、水の中にカラフルなしがらみを作っちゃった
あなた大したもんですね

そんな歌なんじゃないかって気がします。

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