参議等、浅茅生の~

浅茅生(あさぢふ)の 小野の篠原(しのはら) しのぶれど
あまりてなどか 人の恋しき

浅茅の生えている小野の篠原の「しの」ではないが
もう忍びきれない
どうしてこんなにあなたが恋しいのだろう

参議等
参議等は、嵯峨天皇のひ孫
三河、丹後、山城の地方官を歴任して
最後は参議となる
歌は4首しか残っておらず
歌人としてはそれほどメジャーではなかったと思われますが
藤原定家により百人一首に選ばれたことで
一躍脚光を浴びる

鑑賞
忍ぶ恋、には2種類ある
思いを伝えたいのにそれを隠す
相思相愛ではあるが、周囲に隠れて付き合っている

今回は、前者のパターンです。

浅茅、は茅葺き(かやぶき)屋根に使われる細い竹
生がつくと、浅茅が生えている野原になる
篠原と、しのぶの、しのが重なることで忍ぶ思いを強調

あまりて、はあふれてしまいそうな、の意味
などか、はなんでか

実は、この歌、元ネタがある

あさぢふの をののしのはら しのぶとも
人知るらめや いふ人なしに

あれれっ
ほとんど一緒
下の句が変わっただけ

今なら大騒動になりますね
三善英史の新曲みたいに

でも大丈夫。
本歌取りというれっきとした手法
浅茅生(あさぢふ)の 小野の篠原(しのはら)までは
しのぶにかかる序詞
言いたいことはしのぶ以降ですから。

31文字しか使えないのにもったいないことしますよね

ただ、和歌の良いところは
序詞が、スペースを埋めるだけの言葉じゃないところ

背景というかバックミュージックというか
まずは、茅の生えた野原で、さらさらと
風に揺れる美しい情景を思い浮かべさせてから
最後にちょこっと言いたいことを言う

31文字しかないからもったいないなんて考えているようじゃ
余裕のあるゆったり感が出ませんよ

はい。失礼しました。

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