女性だって仇討ち。すみとたか(宮城野・信夫)

江戸のヒロインシリーズ

すみとたか
四郎左衛門という百姓は、貧しくても働き者。
すみとたかという娘二人の子宝に恵まれて、幸せに暮らしていました。

享保3年(1718年)のある日、四郎左衛門は、娘二人と田の草をとっていました。

1000石取りの田辺志摩という武士が通りかかります。

四郎左衛門は、うっかりその前を横切ってしまいます。

無礼者!
四郎左衛門は無礼打ちに合います。

助けようとした、娘二人にも刀を抜いたので、
命からがら逃げ帰りました。

待っていたのは病気の母親
娘たちは顛末を話しますが
母親はショックで、追うように亡くなってしまいます。

娘二人が話し合って選んだのは、
親の仇を討つという道。

この時残された娘二人は姉11歳、妹8歳
百姓の娘が敵う相手ではありません。

領内を退居して陸奥守様の剣術師範である瀧本伝八郎へ奉公することになりました。

練習風景をじーっと見て、
こんなふうにしていたなあと
みんなが居なくなったところで棒を振ってみる。

それで敵が討てるようになるのかは分からないけど
幼い二人に思い付くことはそれくらい。

ある時、素振りしているところを見られ

何をしているのじゃ

申し訳ございません。
実は、父の仇を討ちたいとは思っておりますが
私たちに出来ることが何なのか
それすら分からない状態です。

どういうことだ
詳しく話してみい

(云々)

そなたたちの決意、尋常ではないと
先程の素振りを見てしかと理解した。
明日から、本格的に伝授いたそう
じゃが、並大抵の事では無いぞ。心せよ。

猛特訓が始まります。
特にセンスがあるという訳でもないので
メキメキと上達、とはなりません。
ひたすらに同じことを続けて、体に覚えさせる事しかない。
ただ熱意しかない。

予定を越えて、6年の歳月を要したが
いよいよ、その時が近付いたとして
事の次第を陸奥守様へ伝えてくれた。
普通はダメなんだけど、特別措置として
白鳥大明神の宮の前へ矢来を組んで、勝負が実現することになる

仙台御家中衆が警固検分を務める中、
姉妹は大健闘
替る替る戦って、いよいよ志摩を袈裟切りに斬り付けた。

「いまこそ父母の無念を晴らしたまえ」

最後は姉が走り寄って止めをさした。

陸奥守様も、その結果に感激
姉妹を家中の者へ養女に迎えるよう申し付けたところ、二人は共に辞退した。

「仇とは言え人殺しの罪は逃れられず、願わくば如何ようとも御仕置きを仰せ付けられ下されますよう」

そう言うな

伝八郎がやってきて説得

姉は当年16歳で御家老3万石の伊達安房殿(伊達村成)へ、
妹は同13歳で大小路権九郎殿へ引き取られた。

宮城野・信夫
以上が史実になります。
でーこんの若干の演出追加はありますけどね。

これをもとに、
江戸時代の浄瑠璃「碁太平記白石噺」や
歌舞伎「姉妹達大礎」などが作られました。

幼い姉妹が親の仇を討った訳です。
それだけで、極上のお芝居の題材ですね。

当然大ヒット。

名前は、お姉さんが宮城野、妹が信夫
と、故郷にちなむ名前に途中で改名しますので
一般的には「宮城野・信夫の仇討ち」として広まります。

これらのお芝居で、面白いのが
剣を教えた、瀧本伝八郎役が、由井正雪
あの、幕府の転覆を企てたクーデター未遂事件の犯人です。

通常は逆なんですけどね。

実際の事件を芝居にするのは御法度。
忠臣蔵なんかは、時代も配役も変えているんだけど
あの事件ってみんなが分かる。

政府の対応に対する批判的な内容になった方が一般受けするので
どうしてもそういうストーリーにしちゃいますから。

現実のクーデター犯、言わばテロリストを
ヒーロー側に置いちゃいかんでしょう。
よくまあ、幕府がこれに目をつぶりましたね。
庶民には大受けに受けるでしょうけど。

索引はこちら

[江戸のヒロイン]シリーズはこちら(少し下げてね)


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