[天皇]19 允恭天皇。衣通姫の愛

天皇シリーズ、19代の允恭(いんぎょう)天皇です。

允恭(いんぎょう)天皇
雄朝津間稚子宿尊(おさづまあづまつくねのみこと)412~453

允恭(いんぎょう)天皇は、履中天皇や、反正(はんぜい)天皇の弟。

反正天皇が亡くなり、次は、弟さんでしょうね
三種の神器が、允恭(いんぎょう)天皇の元へ。

ここで初めて、文献として、三種の神器が皇位継承の証として登場します。
それより前も行われていた筈ですが。

允恭(いんぎょう)天皇は、性格が控え目
私はそんな器ではない。と固辞

そんな事言われても、他に候補者がいない。
いつまでも天皇が空位のまま。

皇后は、忍坂大中姫(おしさかのおおなかつひめ)
見かねて、承けるよう促す。

その時、三種の神器を受け取るにおいて手を清める水を捧げ持っていた。
允恭天皇は押し黙ったままで時が流れる
12月、凍える寒さで、水が凍り、手にもかかった。
手も凍り付き、蒼白になった。

さすがにそれを見て
分かりました。

衣通姫(そとおりひめ)
衣通姫(そとおりひめ)伝説というのが、日本書紀と古事記、両方に書かれています。
ただ、不思議なことに内容が違う。

まずは、日本書紀に書かれている方の衣通姫から
古事記に書かれている衣通姫は、次の安康(あんこう)天皇の時にお話しすることにいたしましょう。

皇后には妹がいた。
衣通姫(そとおりひめ)と呼ばれていた。
絶世の美女で、肌の美しさが、衣を通して輝いて見えたから。

ピカピカー。
寝るときは、まぶしくてひと工夫いりますね。

噂を聞いた、允恭天皇は、宮中へ来るようにと使いを出す。
当時は一夫多妻制

お姉さんが皇后なのに・・

なりませぬ

允恭天皇は、ちょっとしつこい。
7回も使いを遣わす。

駄目なものはだめでございます。

でも諦めない天皇
姫を連れてくれば、褒美をたんと取らせる
中臣烏賊津(なかとみのいかつ)を向かわせた。

糒(ほしいい=乾かしたご飯の塊)を持って姫の元へ

今日こそは、来ていただきますぞ。
来ていただけるまでは、私はここを動きません。

と座り込む

いずれにしても、連れて帰らねば私は殺されます。
であれば、同じこと。
私はここで死にまする。

姫が用意した食事には一切手をつけない。

姫が離れると、隠し持っていた糒をパクリ

七日目
こんなところで死なれては、寝起きが悪うございます。

ようやく承諾
作戦勝ちですね。

でも、さすがに宮中へはちょっと、なので
近くの別の場所に住まわせる。

足繁く通う天皇。
誠実な人柄に、次第に心を開き、二人は愛し合うようになります。

一方で皇后も子(後の雄略天皇)を宿します。
いよいよ産まれるという日まで、衣通姫の元へ向かう夫
心底絶望し
産殿を焼いて、お腹の子供ともども死のうとします。

これには参った天皇
反省し、誠心誠意謝ります。

衣通姫はもう少し遠い所にお引っ越し。

可哀想なのが衣通姫
その時は、天皇を愛するようになってしまっていました。

そうそう来れなくなったのは分かります。
姉の気持ちだって分かります。
分かりはしますが、

やっぱり会いたい。

頭ではなく、心がそう言います。

ただ待つ日々

今日こそは
今日こそは来てくれるんじゃ無いかしら。

あっ
間違い無いわ
今日よ
だって

我がせこが 来べき宵なり 笹が根の蜘蛛のふるまい 兼てしるしも
「わがせこが くべきよいなり ささがねの くものふるまい かねてしるしも」

中国の故事で、笹の根元にクモが巣を張ったら、愛しい人が来てくれるって。
ほら

和歌三神
和歌三神というのがあります。
和歌の守り神。玉津島明神(たまつしまみょうじん)と住吉明神、柿本人麻呂の三柱の神
玉津島明神とは、和歌山県の和歌浦(わかのうら)にある神社

祀られている神様が、衣通姫です。

実は、衣通姫が残したとされる和歌はもうひとつだけ

とこしへに 君も偶(あ)へやも 漁(いさな)取り 海の浜藻の 寄る時々は

(いつも、しょっちゅうあなたに逢いたいけれど、そんなことができるでしょうか。海の浜辺に藻が寄せるように、時々しかあなたは寄ってくれないのに)

この2首だけで堂々の和歌三神です。

衣通姫に魅せられた人は、第58代光孝(こうこう)天皇
夢枕に衣通姫が立って、和歌を詠んだと言います。

立ちかえり またもこの世に 跡垂れむ その名うれしき 和歌の浦波

ということで、和歌の浦の玉津島明神に神様として、衣通姫を合祀しちゃいました。

そしてもうひとり、徳川5代将軍綱吉の側用人、事実上の大老、柳沢吉保です。
柳沢吉保は、拝領した駒込の広大な土地に庭園を作ります。
六義園(りくぎえん)です。
その池に水を引くため、玉川上水から延々と用水を引いたのが千川上水です。

和歌が大好き、和歌山大好き、衣通姫大好きな柳沢吉保は
和歌山の名勝を再現し、それぞれの地で詠われた和歌の景色を再現します。
何と言っても「和歌」山というくらいですから、和歌の国です。

当然、中には和歌の浦と玉津島明神を作り
衣通姫を祀ります。
衣通姫の「我がせこが」の歌も再現します。
ここがささがにの道
(古今和歌集では笹が根は「ささがに」と変わっています。細いとか小さいとかいう意味で、蜘蛛にかかる枕詞)

シリーズの次回は、安康天皇にからめて、古事記に書かれた方の衣通姫を紹介します。
随分違いますよ。

[天皇]シリーズはこちら(少し下げてね)

[天皇]19 允恭天皇。衣通姫の愛」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: [天皇]20 安康(あんこう)天皇。衣通姫の禁断の愛。 | でーこんのあちこちコラム

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です