母さんはこんな人(料理)

おふくろの味
うちの母さんが料理が大の苦手。
苦手というより、嫌い、に近い。
料理をうまく作るということに価値観がないから、上達するはずがありません。
強火しか使ったことがなかったような。
調味料のラインナップもほとんどなかったんじゃないかな
料理酒なんて使ったことないと思う。

お米のご飯がまずい。
そして、味噌汁がまずい。
その2つがまずいと、どうしようもありません。
おふくろの味とか、おふくろの味噌汁がどうとか。
全くわかりません。

大学の時、男友達の家に泊まったら、明くる朝、味噌汁をつくってくれた。
そのうまいことうまいこと。

お前、この味噌汁なんよ。なんでこんなにうまいん?
どないしたら、こんなにうまい味噌汁作れるん。

いやあ、ふつうに味噌といて作っただけやけど。

そんなわけあるかい。
いやあ、生きてて良かった。
味噌汁ってうまいもんやったんか。
お前の事をこれからシェフと呼ばさしてもらうわ。

日頃の食卓でも、うまい料理が出たときは、母さんも得意満面。
どうや、今日のチンジャオロースうまいやろ。
うまいうまい。
これは、すごいわ。感動もんや。
今日は、どこのんよ。

今日はな、ハウスや。

さすがは、ハウスやな。
やっぱり、プロはちゃうな。
この前の味の素もうまかったけどな。

ようテレビで、インスタントもんですまさんと、手作りでどうたらこうたら言うてるけど嘘八百やな。
プロに叶うわけないやんな。
ハウスさんとか、味の素さんとか、どんだけ研究してるかっちゅう話やで。
素人が「手作り」やて。笑わすわ。

ほんまやほんまや。

結婚して
結婚して、カミさんの料理を食べたとき、ビックリ仰天でした。
うまいもんは、ハウスさんとかの、プロでこそ可能なんであって、素人には絶対無理だと思い込んでいましたので。

なんじゃこりゃ。
なんで、こんなにうまいもんが作れるん。
どんだけ気合い入っとんのよ。

ところが、次の日も、その次の日も、食事がべらぼうにうまい。
あかん。幸せや。
ひょっとして、今後もこんなうまいもん食べれんねやろか。
バチあたらんやろか。

思いますけど、母さんは、最高の教育を施してくれたのかも知らん。
どこで何食べてもうまいのなんの。
子供に幸せな人生を歩んでもらおうと思ったら、絶対不味いもんばっかり出すことやね。

卵焼き
そんな母さんですが、唯一進歩した料理があります。

遠足だの、運動会だので弁当を持っていくと、卵焼きって定番。
でも、家の卵焼きはちょっと恥ずかしかった。
真っ黒なんです。

でも、ある日

見てみ、これ

き、黄色いわ
黄色いやん、この卵焼き。
友達食べてたんより黄色いかも。
すごいわ母さん。
見てみ見てみ、横から見ても黄色いで。
どないしたんよ。

醤油やめてな、塩にしてん。

ほんまか、
発想の転換ちゅうやつやな。
やるがな。

食べてみ。

もったいないな。
でも食べよ。

うまーっ。
うまいで、母さん。
食べてみ、むっちゃうまいで。
塩はすごいわ。
専売公社は表彰もんやな。

明日も作ってな。
その次の日もな。

はいな。

かくして、塩だけの卵焼きは、母さんの得意料理となり、それから数ヵ月続きました。
それだけ作ると、さらに黄色さに磨きがかかり、心底、きれいで、美味しい卵焼きになったのです。

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