聞く力-阿川佐和子にノーベル賞を

阿川佐和子の「聞く力」を読みました。

土曜の朝にやっている「サワコの朝」というインタビュー番組が大好きです。
土曜ってウォーキングイベントが多いので、なかなか見れないのですが
見れるときは必ず見ています。

毎回思うのですが、とにかくハズレがない。
へえーー。
面白いわ、この人。
例えば水谷豊の回だったりすると
それまで、水谷豊に持っているイメージを間違いなくいい方に裏切ってくれる。
水谷豊が面白い人なわけだから、それはそれで納得なんだけど、
見るたびにどの人もすごくて、ずっと余韻が続く。

ということは、聞き手がすごいということなんだな、とだんだん気づいてくる。
一人、自分自身がすごいってたかが知れているけど
会う人会う人全員を面白い人にしてしまうって、数倍すごいことだなと思ってきた。

阿川佐和子こそノーベル賞だ。

聞く力
ずいぶん長くベストセラーが続いていましたよね。
続編とかも出たりして。
阿川佐和子が好きなので、気になってはいたんですが
ようやく手にしました。

わかりました。
こりゃベストセラーになるわ。

何度も何度も、なんなんだこの本は、と思いつつ。
ぐるぐる本を回しながら眺める。
そんな気持ちにさせる本でした。

最初の方
最初の方はまあ予想通りの展開。
自分はインタビューは得意ではない、から始まって、最初の頃の失敗談。

城山三郎さんにインタビーした時、自分が一方的にしゃべってしまったこと。
あの時、自分を大いに乗せて、しゃべりっぱなしにさせたあの城山さんを目指そうと。

でも頑張ろうと努力し、準備しすぎると、進行ばかりが気になっていい話が聞き出せずに終わっちゃう。

うん分かる分かる。
サワコの朝は見事に自然に聞き出せている。

そういう表現は本の中ではしていないけど、
シロートっぽさを忘れちゃいけないってことなんでしょう。

相手の話に素直に耳を傾け、聞きたい話を「なんでなんで」と聞きだしていく。

サワコの朝はそういうシロートっぽさがちゃんとしている。

そこから
でも、そこで終わってればベストセラーになってなかったでしょうね。
ある意味、予想できた話ではある。

阿川佐和子は、そこからがたいしたもん。

シロートっぽさだけでいいのであれば、友達どおしでカフェで話していればいい。
視聴者や読者に目の前の人の面白いところ、いいところを引き出して伝えなきゃならない。
そういう「商品」を作るという使命を持っている。

プロやなあ
と、何度も感じた。
シロートをちゃんと持ちながらのプロ。
見事なまでのプロです。

お決まりの話にならないように
「お決まりの話にならないように」
という項での話は、その最たるもんだなと。

前もって相手の資料に目を通して臨むので、いつも同じを聞かれているということが分かることがある。
お決まりの質問。
いつも聴かれるので、本人も飽き飽きしているだろう。
その人にとって、その話はずっと同じ答えで固定化されている可能性がある。

質問するかどうか。

しない、とくるのかと思いきや、「外せない質問」だといいます。
すごいなと思いましたね。
中途半端なプロじゃない。

何度も聞かれるということはみんなが聞きたいこと。
ちゃんと「大衆」を背負っている。
個人的な興味で終始するシロートを超え、「大衆」目線にちゃんと戻す。

お決まりの質問をする。
お決まりの答えが返ってくる。

ここからが彼女のすごいところ。
ここで終わらしてはお決まりの質問をした意味がない。
お決まりの答えに全神経を集中し、グジャクジャ探って分析し、しつこく食い下がっていけば
新たなエピソードが生まれるはず。

なるほど、これこそが、ありがたくもお聞かせいただいている「サワコの朝」の面白さなのですね。

全体に渡って
とにかくすごいのが、全編にわたって、自分のインタビューした体験話で埋め尽くされていること。
どっかに乗っていた話、みたいなのが全く存在しない。
20年にもわたって週刊文春でインタビューの連載をしているのは伊達じゃない。
全てが生きた話。

こんなに面白い話をいっぱい持っていると、私だったら人に話したくて仕方なくなる。
例えば次のインタビューの時、
でしょう。そういえば、この前〇〇さんにインタビューしたとき似たようなことを言われてたんですけどね
みたいに、そっちに持っていきたくなる。
でも、毎回インタビューでは、相手に集中してリセットするわけでしょう。
それ考えただけでも尊敬に値します。

今日は、本の具体的な内容は一つだけしか紹介しませんでしたが、
それ以外にも、こりゃすごいっていうのが随所にありますので、機会がありましたら。

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