[迷信]22 梅雨入り前に梅を食べてはいけない

ハウス栽培が盛んになって野菜に季節感がなくなってきているが
それでも、初夏のスーパーに並ぶサクランボやビワ
今の時期なら柿、梨、栗など、果物の中には
また季節がめぐってきたと感じさせてくれるものがある

青梅
青梅もそんな季節感のある果物のひとつ。

梅雨にさしかかる数週間だけ梅酒や権ジュースなどの加工用として店頭に出る。
カミさんは毎年浸けて梅ジュースを作る
しかし、昔からけっしてそのまま食べてはならないといわれている。

1年のうちごく短い時期にしかお目にかかれない青梅を
食べてはいけないとは、いったいどういうことなのだろうか。

未熟な梅には、青酸配糖体のアミグダリンという毒の成分が含まれているのだが、
これを食べると体内の酵素で糖とシアン化合物に分解される。
シアンは猛毒。
特に、まだ種が柔らかい若い実は危険で、
硬い種に成長したものに比べて10~20倍ものアミグダリンを含んでいる。

そのため、1個食べただけでも腹痛や強いアレルギー反応を引き起こすことがあり、
多量に摂取する昏睡状態になり、最悪の場合は死に至ることもあるのだ。

実が大きくなるまで待つ
このような若い梅の実が強いを持っているのは、
しっかりと成長するまで実を守るためだと考えられている。
熟す前の若い種を食べると体調を崩すとなれば、
人間や動物も近寄ってこなくなる。
植物の子孫繁栄の知恵です。

実際、実が大きくなれば毒の成分はかなり減る。
エムルシンという酵素が毒を分解して、
収穫する頃には果肉にはほとんど残らないのだ。

種が硬くなるまで成長していれば、もし生で実食べてしまったとしても、
子供でも100個くらい食べなければ、深刻な影響は出ない

ちなみに、アミグダリンは梅と同じバラ科サクラ属の
アンズ、ビワ、スモモの種にも含まれている。

一時、健康食品としてビワの種を粉末にした加工食品が出回ったことがあったが、
農林水産省は健康を害するおそれがあるから食べないよう呼びかけている。

また、がんに効くとうたったアミグダリンのサプリがインターネットで出回ったこともあり、
実際にがん患者が服用して重篤な健康被害を出した例もある。

もちろん、梅酒やジュースとして加工する分には何も心配はいらない。

数週間~数ヵ月かせて出来上がった頃にはアミグダリン化している。

梅は2000年前に書かれた中国最古の薬物学の本にも載っていて、
日本には3世紀の終わごろに伝来している。
「梅雨入り時に梅を食べてはいけない」というのは、自然に対する昔ながらの知恵なのだ。

[迷信]シリーズはこちら(少し下げてね)

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