[織田信長]1 まむし殿の娘、濃姫
[織田信長]2 二人だけの時間では
[織田信長]3 美濃はそなたに差し上げる
の続きです。
駿府
駿府の領地は、今川義元が押さえている
今川は、足利の親戚であり、とても由緒正しい
江戸時代の御三家のように、
足利氏にお世継ぎができなければ、スペアとして控えているのが、吉良氏と今川氏
義元は、公家志向が強く、やんごとなき生活
とはいえ、戦にも長けていて、盤石の体制を誇っていた
そんな義元が、いよいよ決意を固めた
京都へ上洛して、天下を取る
とすると、通り道に尾張の織田信長がいる
強敵ではあるが、まだその実力は十分に分かっていない
蹴散らせてやろうぞ
大軍を準備
織田攻めのメイン担当を誰にやらせようか
あやつが良かろう
人質に取って預かっている、有望株
松平元康
のちの徳川家康である
今川の大軍来たる
織田信長に知らせが入る
数でいうと一対八
信長に到底勝ち目はない
戦略は?
今川軍を見ると、前軍(元康)が遥かに先駆し、今川本軍はずっと遅れてきている
前軍との戦いを回避して、直接本軍につっこむ
刻々と入る知らせを分析
よし、今だ!
小鼓をもてっ
さっと受取ると、東向きに立ち、朗々と謡曲「敦盛」の一節を謡い出した。
──人間五十年、化転の中を較ぶれば、夢まぼろしの如くなり、ひとたび生を受け、滅せぬ者のあるべき、
かぶとっ
おん前に
と応じた小男を見た
おお、猿か
木下藤吉郎
のちの豊臣秀吉
馬の横に、藤吉郎がふうふう言いながら走ってくる
今、本陣は?
桶狭間村で休憩しております
よし、桶狭間へ
その頃、元康は、丸根砦攻め
守将佐久間盛重も奮闘するが
元康の大勝利
丸根砦陥落の知らせが、義元の元に届く
よしよし
すぐそこまで、信長本軍が迫っているとは知る由もない
信長の首がもたらされるのも時間の問題
完全勝利を確信し、宴を催す
晴天だった空に急に黒雲が広がり
雷雨が轟いた
土砂降りは短時間で終わったので
宴の準備を引っ込めたりまた出したりと大慌て
行けえっ
大雨と雷がなければ気配を隠しきれなかったかもしれないが
すぐそばまで気づかれなかった
今川方は愕き慌て、数ヶ所にまとめてあった槍をとりに走る間もなく、
太刀でこれに立向った為、著しく不利だった。
決死の兵と、緩み切った兵との闘い。
気魄も闘力もまるで桁が違う。
今川方の将士は、片端から討たれてゆく
桑原甚内が、義元を見つけた
「お屋形、御首級(おしるし)頂戴仕る」
織田勢圧勝
帰り道、藤吉郎の姿が見えない
藤吉郎は大声を出して、
織田信長、今川義元を討ち取ったり
と触れて回った
残兵に無駄な戦いをさせずに引き上げさせるため
唯一、引き上げなかったのが大高城にいた、松平元康
隣の岡崎城は今川勢が全て引き上げてしまって、もぬけの殻
今川が捨てた城なら拾っても良かろう
今川勢ながら、唯一大活躍だった元康
念願の元の領地三河を、自力で取り戻した形になった