[百人一首]52 明けぬれば~

明けぬれば 暮るるものとは 知りながら 
なほ恨めしき 朝ぼらけかな

夜が明ければ、また暮れる
暮れればまた会いに来れる
分かってはいるが
今、この帰らなければならない
朝が恨めしい

鑑賞
後朝(きぬぎぬ)の歌ですね

後朝の歌というのは
初めて男女が想いを遂げた翌日の朝すぐに
男性から女性に贈る歌。
絶対に贈らないといけないと
法律で決まっている訳ではないけど
贈る人が多いとなると
贈られなかった女性からどう思われるか、恐怖なので
これはもう必須。


みんなが贈るとなると
どれだけ早く贈るかが、情のあるしるしとなるから
かえったとたんにすぐに女性のもとへ歌を書いて使わす必要がある
もう大変。

なぜそうなのかというと
当時は一組の男女が一緒に暮らすという結婚のスタイルではなく
夜に男性が女性のもとに通う、通い婚。

だから、朝になると帰らないといけないと
朝を恨んでいるわけですね。

その背景さえ分かれば
歌自体はストレートで、技巧に走っているわけでもなく
現代人にも分かりやすいですね。

藤原道信
藤原道信はみんなに好かれる
愛されキャラだったようです。

でも、この人もまた短命。
わずか23歳でこの世を去る

彼が死んだ年は天然痘が猛威をふるった年なので
おそらく同様に天然痘だったのではないかと思われる。

道信には悲恋の経験がある

相手は婉子女王(えんしじょうおう)
有名な美人で、14歳で花山天皇の女御になったんだけど
二年後に花山天皇は譲位して仏門に入っちゃう。
16歳で宮中を退出することに。

さあ、男たちの目の色が変わります。

熱心に言い寄ったのが
道信と藤原実資(さねすけ)

実資は道信より15歳も年上の大人の男性。
社会的地位があって大金持ちで、頭が良くて、気骨と手腕に恵まれた政治家。

ちょっと無理かな

ついに、婉子女王は実資夫人に

でもね
通い婚なので
すぐには気付かない。

随分たってから、風の噂で聞く

凍り付いてしまいそうなショック

うれしきは いかばかりかは 思ふらむ
憂きは身にしむ 心地こそすれ
(恋を得た人はどれだけ嬉しいことでしょう
それにひきかえ、私の辛さは身にしみます)

ただ、そのあと、婉子女王も
27歳の若さで死んじゃうんですけど。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です