[百人一首]85 夜もすがら

夜もすがら 物思ふころは 明けやらで 
閨のひまさへ つれなかりけり

一晩中、つれない人を想ってなげくこの頃は、夜もなかなか明けず
光の差さない寝床の横の板戸の隙間さえつれなく思えるわ

俊恵法師
俊恵法師(しゅんえほうし)は
71.夕されば 門田の稲葉 おとづれて 芦のまろやに 秋風ぞ吹く
の源経信の孫で
74.憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを
の源俊頼の子供

親子三代で百人一首に採用された堂々たる家系ですね

本人も非常に優れた歌の才能を持っていて
自宅を「歌林苑」と呼んで
毎月歌の会を催している
有名どころが常連さん

そして、あの鴨長明もお弟子さんです。

鑑賞
俊恵法師が、女性の気持ちになって詠った歌です。

当時は通い婚なので、女性はただ待つばかり

ああ、あの人は今日も来ていただけなかったわ

いいや、今日は寝ちゃえ

・・・・

うそ
寝れないじゃない

どうしましょ
せっかく寝ようと思ったのに

・・・・

いくらなんでも、もうすぐ朝だと思うけど

(何度も板間の隙間を見て)
いつまでたっても、光が射してこないわ

ねえねえ、隙間さん
あなたまで、私につれなくするのね

・・・・

なんだか気持ちがおさまらないわ
何なのよあなた

この際、はっきりしておきましょう

あなたねえ

あなたは
ただの隙間よ

こういう歌です。

面白いですね
隙間に話しかけている感じが
発想としてとても斬新です。

こんなことまで三十一文字にしちゃうって
ただもんじゃないですね。

さらに、和歌の無限の可能性を
改めて感じてしまう、一首です

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