[百人一首]38 忘らるる~、私は良いんです。お体だけは。

忘らるる 身をば思はず 誓ひてし
人の命の 惜しくもあるかな

忘れられる私のことはいいのです。
でも神様に愛を誓ったあなたにばちが当たって
命を落としてしまわないかと心配です。

右近
例によって、女性はなかなか自分の名前では呼んでもらえません
右近は、お父さんが、藤原季縄(すえなわ)右近少将だったから、右近と呼ばれています。
醍醐天皇の皇后、穏子(おんし)に支えた

鑑賞
この歌の相手は、藤原敦忠(あつただ)
逢ひ見ての 後の心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり
の作者になります。

どう解釈するか、論争があるようです。

忘らるる、は忘れられてしまう
身をば思はず、は私の事はどうでもいい。
誓いてし、で、ふたりの愛は永遠と誓いましたね。

ここまでは良いとして

言葉通りに読むと
あなたに罰が当たって死んでしまうかも知れません。
それが私は心配です。

けなげな女性。
以前はそのままに読み解く説が有力だったんだけど

ちょっと待ってください。
そんな女性いますかと

死んでしまうかも知れないわね
心配だわ
(うふふ、せいぜい気をつけることね)

と、かっこに囲まれた気持ちがくっつくんじゃないかと。

分からないではありません。

でも、私でーこんは、敢えて前者の説を採りたいと思います。

確かに通常なら、後者だとは思います。
でも、さらに特殊な状況があったんじゃないかと思うんです。

「人の命の 惜しくもあるかな」
と、その言い回しがどうにも気になる

なぜそう思うかというと
実際に、藤原敦忠は、そのあと若死にしちゃうからなんです。
そして、自分が若死にすることを予言している。

ちゃんと理由があります。
愛の誓いを破った事以外に、もうひとつの若死にする理由

藤原敦忠のお父さんは藤原時平
菅原道真を太宰府に追いやった張本人。
恨みつつ死んだ菅原道真に関連し、恐ろしいことがいっぱい起きます。

藤原時平を始めとし、その一派がどんどん謎の死を遂げていきます。
世間では、菅原道真のたたりだとの噂がしきり

次は誰?
その次は?

強い相手に
馬鹿野郎死んでしまえ、とは思うでしょうが
逆風で世間全般が、次はお前だと名指しされている相手。

そんな人を目の前にして
やあい、死んでしまえって思うでしょうか

増してや、一度は心底愛した人なんです。

私は良いんです。
あなた今大変ですよね
誰に何を言われようとも
お体だけは気をつけてくださいね

歌のままのストレートな感情だとしても
何らおかしくない、
その時の特殊事情だと思います。

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