紺屋高尾は、人の気持ちの分かる人

江戸のヒロインシリーズです。

以前、吉原の高尾太夫についてお話ししました。
[江戸のヒロイン]吉原で高尾太夫と首尾良く遊ぶ方法

先週、ウォーキングイベントで吉原に行ったもんですから
高尾太夫について、おさらいしておこうと思いました。
もう少し調べてみると、5代目の紺屋高尾(こうやだゆう)がなかなか感動的。
一回、話してはいますが、追加で紺屋高尾だけ、再度いきましょう

紺屋高尾
紺屋高尾は史実を元にした、浪曲。
当時異常なほどの人気を博し
以来、落語としても、超人気演目らしいです。

談志、円楽、歌丸等々、人気落語家たちがこぞって得意演目にしています。

神田にある紺屋に勤めている染物職人、久蔵
11歳で奉公し、26歳まで、くそまじめに働いてきて
親方から見ると、頼りにはなるんだけど、
余りにも遊びを知らなさすぎて、面白くもなんともない

ある日、病気で仕事を休みたいと言ってきた。
食事が喉を通らない。

そんな事、今までただの一度も無かったので
びっくり仰天

一体全体どうなっちまったんだ

良く良く回りに聞いてみると
職人仲間たちも、久蔵が堅物過ぎると
嫌がる久蔵を、無理矢理吉原に連れていった。

結局何をすることもなく、そのまま帰ってきたものの
その途中に花魁道中(おいらんどうちゅう)を目撃した。
(時代的には、紺屋高尾の時代は花魁とは呼んでいないんですが、分かりやすくそう表現しました)

真ん中にいたのが紺屋高尾

この世のものとは思えない美しさに
一瞬で恋に落ちた

それ以来、見るもの全てが紺屋高尾に見える。

こいつ本当にやつれて死んじゃうぞと思った親方は
何とか金をためて会いに行こうじゃないかと提案。

急に血の気が戻ります。

何せ、相手はトップ中のトップ
通常の遊女とは桁が違います。
今のお金にして、100万円ほどを貯める必要がある。

今までにも増して身を粉にして働いて
生活は限界まで切り詰めて、
3年の歳月が経過しました。

さあっ

金があったところで、染物職人ごときには会ってもらえないので
江戸を代表する大店の若旦那だと一芝居を打つことにする。

芝居がうまくいって、紺屋高尾が目の前に

ああ、3年の苦労が

夢のような時間があっという間に過ぎ去ります。

高尾太夫という最高ランクの遊女は、
ご想像のようなことは、1回2回では無理です。3回通ってようやくです。

「今度はいつ来てくんなます」

その一言に、思わず久蔵の目から大粒の涙がポロポロッ

「どうされました?」

正直者の久蔵はついお芝居を忘れ、全て喋ってしまいます。

最初に見かけたときの驚き
親方に提案してもらった時の嬉しかったこと
3年間のがむしゃらな日々
今、お会いできたこの幸せ

今度はいつ
って、3年後です。

その間に、もし身請けでもされたなら。
会えないんだろうな

そう思うと、涙が自然に。

しばらく沈黙の時が流れ
紺屋高尾の目にも光るものが。

来年の三月十五日に年季が明けるから、その時女房にしてくんなますか

久蔵、号泣

それから
そんなの社交辞令に決まってるだろうが

みんなにそう言われるし
自分でもそうだろうな、とは思うんだけど

その日に向けて、今まで以上にがむしゃらに働く。

三月十五日
向こうから、一人の女性が歩いてくる。

本当に

本当に

働き者で仲の良い夫婦として有名になる

イベントで
イベントで吉原公園でこの話をしたんだけど
思いがけず、込み上げてくるものがあり、危うく声が続かなくなりそうだった。

久蔵というより、紺屋高尾の気持ちがグッと

嬉しかったんだろうなあ

どんなに人気があり、江戸中で評判かも知れないけど
元はと言えば、親が貧乏のどん底で、どうしようもなくなって、売られてきた身

ずっと、虚の世界の中で着飾って、大名たちに話は合わせられるけど
何かが違う

欲しいのはこれじゃない

貧乏でも・・・の先にあるもの
子供の頃欲しくて、結局は叶わなかったもの

この人となら。

索引はこちら
[江戸のヒロイン]シリーズはこちら(少し下げてね)


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