[百人一首]92 わが袖は。沖の石でブクブクブク

わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の
人こそ知らね かわく間もなし

私の着物の袖は、引き潮の時にも見えない沖の石のように
誰にも知られないけれども、涙に濡れて乾く間もありません。

二条院讃岐
讃岐は源頼政の娘。
源頼政は、歴史的にかなり重要な意味を持つ人。

保元の乱、平治の乱ともに勝った側に所属
平清盛の信頼も厚かったが、
本人としては、それならば、もうちょっと位を上げてくれても良いんじゃないの?

得意の和歌でそれとなくアピール

清盛は、あらそうだっけ忘れてた、と
位をあげてくれたんだけど
もうすでに、74歳

そんな、くすぶっていた気持ちがひとつの形になる
後白河法皇の第三皇子の以仁王(もちひとおう)を担いでのクーデター計画

なんとこの時、77歳
これからはワシの時代じゃ

事前にばれちゃって、準備不十分なままに、包囲され
自刃に追い込まれちゃいます。

そんな、頑張り屋さんの娘は、歌人として超売れっ子
勅撰和歌集に74首も選ばれた、この時代の第一人者です。

鑑賞
この歌、斬新です。

当時、短歌はほとんどが題詠
なんとこの時のお題は、「石に寄せる恋」

月や鳥や花ならまだしも
石に恋するとはむちゃくちゃでしょう。

よほどネタ切れだったんでしょうね

あきらめかけたその時
出たっ。後々まで語り継がれるほどのこの歌。

わが袖は

ハイハイ来ましたお決まりです。
袖と来るだけでパターンは決まっています。
叶わぬ恋で袖を濡らすんですよね

でも、ちょっと待てよ
お題は、石なんだけど、どう展開していくの?

みんな、かたずを飲んで、次を待ちます。

潮干に見えぬ 沖の石の

沖の石は、沖の方にボコッと海から顔を出した石
の筈なんだけど

潮干に見えぬ

潮干はひっくり返すと干潮だから、潮が引いても見えない
すなわち、ずっと、海に浸かりっぱなし。
ブクブクブク

えっ、どういう事?
となったときに、お決まりに戻す。

人こそ見えね

見えない石な訳だから、誰も知らないでしょうけども
人、は特定の人となると、あなたは鈍感だから気づかないかも知れませんが
となる

乾く間もなし

出ました、ど定番に戻りました。
でも、この濡れ方が半端ないです。
短歌史上最高の濡れ方でしょう。

感動の嵐です。
むちゃくちゃなお題で、誰しもが無理でしょうと思うところに
ど定番で分かりやすいのに、予想を何倍にも裏切る

元々売れっ子ではありましたが
この歌は、完全に讃岐の名前を不動のものにします。

それ以降、讃岐を呼ぶときは「沖の石の讃岐」

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