植物は位置を感じている

植物の感覚シリーズ
今回は、上と下です。

上と下
言われてみると、根って下に伸び、芽や枝は上に伸びる
どうやって、植物は上や下が分かるんでしょう。

良いですね。私はバリバリの適当な文系人間ですので
そんなこと考えてもいませんでした。
当たり前やん

真剣に必死で実験し、議論するんですね。
立派です。
嫌いじゃないです。その姿勢。

太陽のある方向でしょうか
いえ、それでは地面の中の根は上下が分からない筈。

例えば、豆をピンで壁にとめておきます。

根は下に、芽は上に伸びていきます。

ある程度伸びた段階で、くりっと上下逆に。

そこから、根の先も芽の先もぐいっと曲がり、上と下に伸び始めます。
偉いぞ!豆

実験
ここから、科学者達の真理探究の旅が始まります。

そもそも、この上と下というのは何なのか
重力という事なのだろうか。

こういうときは実験です。
ずっと回り続ける円盤を用意します。
そこに苗をくっつける。
常に上と下が入れ替わる訳です。

なんと、根は外に、芽は内に

上と下というのは、重力の事であり
さらにそれは人工的に作り出した重力(=遠心力)でも同じである事が証明されたのです。

場所
この問題は、19世紀初頭にまた盛り上がりを見せます。
お馴染みダーウィンです。

ダーウィンが疑問に思ったのは、果たして植物のどの部分で重力を感じるのか

豆の根の先をちょんぎって、湿った土の上に横たえた。
根は伸び続けたが、土の下のほうに曲がって伸びる能力は失われていた。
根の先っぽを0.5ミリ切断するだけで、植物は重力に対する全般的な感度をなくす!

切断した数日後に根の先が新しく生えてくると、その根はふたたび重力に反応し、
以前のように土の中へと下向きに伸びる

なるほど、根の先に重力を感じる場所があるということになる。

これは、屈光性の実験と似ている
芽の先が光を感知するんでしたね
とすると、屈光性は先っぽで感じるけど、その情報が茎に伝わり
光と反対側がより多く伸びて、ぐいっと曲がる。

この仮説を証明するための実験。

根を出した豆
横向きにセットする。
そして今度は90分経ってから先っぽを切断。
すると、さっきとは違い、下に曲がっていく。

どういうことか。

あっ、横向いている。
下に曲がんなきゃ。
という情報が、90分の間に、実際に曲がる場所に伝わっていたということ。
時間差攻撃です。

当然、芽でも同じことでしょう。

ところが!

なんと芽では、先を切り取られても成長し続けることが明らかになった
参った!

根と芽は違うメカニズム
同じ芽でも、光に向かうメカニズムと上に向かうメカニズムは違う。

ダーウィンはここまでで時間切れです。

この疑問の解明は、時代がさらに経って
分子レベルで仕組み自体の解明がなされるときまで待つ必要がありました。

仕組み
顕微鏡の発達が謎の解明を可能にしました。

精巧な顕微鏡により、根冠の細胞内の微小な構造が見えるようになった。
根冠の細胞内には水が詰まっているが、その中に極々小さな石のようなものがあることが分かった。
「平衡石」と呼ばれている。
細胞を横にしてみる
すると平衡石は重いから、流れて横の壁の方に移動する。

水の入っているペットボトルの中にビーズが入っていることを想像して欲しい。

じゃあ、芽は?
根の場合は、平衡石は先っぽにのみ集中しているが
芽の場合は複数色んなところに存在する。
だから、芽の先だけ切られても問題ない。

螺旋(らせん)運動
実は、ダーウィンは他にも重要な事を発見していた。

芽の先はどんな植物でも螺旋(らせん)運動を繰り返しつつふらふらしながら成長していく。

こりゃいったい何故なのか

ここで学説が分かれる。
ダーウィンは、植物が元々持っている性質だと考えた。

それに対して反論する人がいた
重力の問題じゃないか

芽は、重力と反対の方に伸びる。
芽は重いから、その性質がなければ垂れてくる。
頑張って上向きに変えようとする。
ところが勢い余って、反対側に曲がっちゃう。
いかんもう一回、とまた逆に。

かなり真剣にこの議論は長い間繰り返される。

この終わりの無さそうな議論に終止符を打つときがやって来た。

宇宙への旅立ち

宇宙で植物を育ててみよう。
宇宙には重力がないので
それでも螺旋運動が行われるのであれば、ダーウィンの勝ち。
行われなければ負け。

スペースシャトル内で行われた実験では、わずかながらではあるが螺旋運動が観察された。

ダーウィンやったね。

ところがここで物言いが着いた。
時間が短すぎる。
すでに地球上で育てられている植物を持っていって、数日間育てただけでは
もうその運動が刷り込まれているのかも知れない。

大変です。
そんな長く宇宙にいられません。
一から植物を育てるなんて。

この解決は「宇宙ステーション」の技術へ引き継がれました。
まだ明確な答えには至っていませんが
もうすぐ答えが出るでしょう。

索引はこちら
[植物]シリーズはこちら(少し下げてね)


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