[昭和歌謡]145 千の風になって

「昭和ヒット曲全147曲の真実」という本に基づいて進めてきたこのシリーズ
私のシリーズの中では最長ですが
いよいよ、今回を含めて、あと3回になりました。

千の風になって
秋川雅史
作詞・不詳、日本語詞・作曲、新井満
2006年

♪私のお墓の前で 泣かないでください
そこに私はいません 眠ってなんかいません
千の風に 千の風になって
あの大きな空を 吹きわたっています


えっ お墓におらんのかいっ

衝撃でした
一気に死生観が変わったと言って良い

空から見守ってくれているとか
星になるとか
そういう発想は以前からあったけど
風になってこの辺にいるという発想はなかった

どちらかというと、この辺にいるのは
往生しきれなかった霊というマイナスイメージだった

アクティブになった

墓の中に眠っていたり
空や星という遠くにいるだけで動き回りはしなかったのに
動きを伴うことになった

すごい
これを考えた人は天才なんじゃないか

元々は作者不詳の英国の詩らしい
それを新井満さんが日本語訳し
曲をつけた

Please do not stand at my grave and weep
お願い 私のお墓にたたずみ悲しみで涙を流さないで
I am not there, I do not sleep
私はそこにいないし、眠ってもいないから
I am the sunlight on the ripened grain
私は豊穣の大地を照らす日の光となり
I am the gentle autumn rain
静かな秋の雨となる
I am a thousand winds
私は千の風
I am a thousand winds that blow
吹き渡る千の風
I am the diamond glint on snow
雪の上でダイヤとなって輝き
I am a thousand winds that blow
そして私は吹き渡る千の風となる

風は良い
絶妙

死んで亡(無)くなってしまう事の恐怖が
あらゆる宗教と密接に関連している

「有」ったものが「無」くなる
とても怖い

でも般若心経ではこう言っている
色即是空(しきそくぜくう)空即是色(くうそくぜしき)
色(あるもの)は空(ないもの)であり
同時に空(ないもの)は色(あるもの)
あるものとないものって実はその間に境目なんてない

これを一文字の漢字で表すと「風」になると思う

風って、有るものなのに無いものだし
無いものなのに有るもの

実体としては空気だけど
空気だけだと風にはならない
空気が動くことによって、我々が感じられる必要がある

頬に感じ、髪を揺らす
木々を揺らし、時には建物だって壊す

死んだらその風になるという
死んでも動けるのか

愛する人の側にいて
語りかける事もできるし
励ますことだってできる

今までで生と死の境を最も薄くしたかも

乾杯!
英国の作詞者と、新井満さんと秋川雅史さん
そして、千の風たちに

久しぶりに両足を踏ん張って、お腹から声を出してみました。

[昭和歌謡]シリーズはこちら(少し下げてね)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です