[三十六歌仙]1 柿本人麻呂。えっしょっぱなから違うの?

三十六歌仙シリーズ一人目です。
代表歌としてあげるのは、須賀神社の三十六歌仙絵にある歌とします

柿本人麻呂

古今和歌集

ほのぼのと 明石の浦の 朝霧に 島がくれ行く 舟をしぞ思ふ

 ほのぼのと明け行く明石(あかし)の浦の朝霧の中をぼっとかすみ、やがて遠くなり消えてゆく舟
 無事な旅であってほしいなあ

明石は兵庫県の歌枕。歌枕とは、歌に歌われる定番の名所です。
この場所で、重要人物が生まれています。
誰でしょう。

でーこんです
本名佐々木
赤ん坊のうちに、加古川市の尾上に引っ越したので記憶は全くありません。
尾上も歌枕です。

と、ここまで話してきて、しょっぱなからなんなのですが
この歌は、柿本人麻呂の歌ではありません。

どてっ

人麻呂は、古今和歌集の序文で「歌の聖」とされ、大絶賛

三十六歌仙を選んだ藤原公任としても、当然一番に選んでいます。

以下の10の歌を人麻呂の優秀な歌としてあげています?

1 昨日こそ年は暮れしか春霞春日の山にはや立ちにけり
2 明日からは若菜摘まむと片岡の朝の原は今日ぞ焼くめる
3 梅の花それとも見えずひさかたの天霧る雪のなべて降れれば
4 ほととぎす鳴くや五月の短夜もひとりし寝れば明かしかねつも
5 飛鳥川もみぢ葉流る葛城の山の秋風吹きぞ頻くらし
6 ほのぼのと明石の浦の朝霧に島隠れ行く舟をしぞ思ふ
7 頼めつつ来ぬ夜あまたになりぬれば待たじと思ふぞ待つにまされる
8 あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む
9 我妹子が寝くたれ髪を猿沢の池の玉藻と見るぞ悲しき
10 もののふの八十宇治川の網代木にただよふ波の行方知らずも

その内、特に6番の、ほのぼのと明石の浦の~、は
上品上、これはことば妙にして余りの心さへあるなり

ところが、この10歌の中で、人麻呂の歌は10番のもののふの~だけ
他は詠み人知らずの歌

百人一首にあげられているあしひきの~さえ、違っていたのね

公任ともあろうものが、何でまた

「人麻呂集」という歌集がある
作者未詳歌の秀歌があげられ、一部人麻呂の歌も。

最初はその歌集に名前がついていなかったんだけど
人麻呂の歌が一部入っていることから、誰言うともなく、人麻呂集と呼ばれるようになった。
そうなると、時が過ぎていくにつれて、訳が分からなくなってきて
歌集にある歌は全て人麻呂の歌であると勘違いされてしまった。

違うんだと分かったのは、時代がさらに随分経ってから。
藤原公任の時代には、まだ信じていた。

せっかくですから
絶対に人麻呂の歌で、万葉集にある歌をあげておきましょう。

東(ひむがしの)の 野にかぎろひの 立つ見えて かへり見すれば 月傾きぬ

東方の野に日の出前の光が射し始めるのが見えて、後ろを振り返って(西の方角を)見てみると、月が傾いていた。

東の野に「炎(かぎろひ)」が立っているのが見えると詠んでいますが、
この「炎」とは「明け方に東方に射す光」
即ち、東方の野に日の出前の光が射し始めている
このタイミングで西の方角を見てみたら、月が傾いて沈もうとしていたよという歌
日と月をうまく対比させつつ、炎に見立ててひとひねり

さらに、いままさに沈もうとしている月を亡くなった父の草壁皇子
のぼる朝陽に文武天皇を喩えて、時代の流れを歌っています。

百人一首のあしひき~の、はこちらを読んでね
 ◆あしひきの、山鳥の尾のしだり尾のながながしよを、ひとりかも寝む”

[短歌]シリーズはこちら(少し下げてね)

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