[迷信]山で急に動けなくなるのは 妖怪のせい

<spanstyle=”font-size:18pt;”>山で急に動けなくなるのは妖怪のせい
日本人は生活にまつわるさまざまな出来事を妖怪のしわざだとして受け止めてきた。

そのひとつにヒダル神がいる。

長旅の途中の旅人や、山を越える途中の人が激しい疲労感や空腹感に襲われて動けなくなり、
最悪の場合は命を落とす。
その悲劇は、人々の間で「ヒダル神に取り憑かれたせいだ」とされてきた。

ヒダル神は西日本を中心に伝承されている、妖怪の一種。
地方によってダラシ、ダル、ダリなど呼び方は違うが、
人間を行き倒れさせるという点では同じ妖怪だ。

やせこけた体にふくれ上がったお腹、ぎょろぎょろと際立つ目、
そのイメージは古くから絵や物語に描かれてきた。

旅の移動手段が徒歩だった時代には、
途中で行き倒れて命を落とす人はけっして珍しくなかった。
ヒダル神は旅人の間で恐れられてきた存在だった。

ヒダル神に憑かれたという人は、急な疲労感や空腹感に襲われる。
そのせいで立っていられなくなったり動けなくなったりする。

文献などで描写されているこの状態は、低血糖状態とすれば説明がつく。

長時間歩き続けることは、体に軽度の負担をかけ続け
有酸素運動にあたる。

有酸素運動の際は、血液中にある糖質がエネルギーに変わり、
それが足りなくなれば脂肪が分解されてエネルギーに変わる。

ただし、脂肪の分解には少し時間がかかるため、
血中の糖質が少ないと補給が間に合わずにエネルギーが枯渇してしまう。

これが低血糖になるメカニズムであり、
空腹で歩き続けると低血糖を起こしやすい。

低血糖を起こさずに歩き続けるためには、
糖質を含んだ食べ物をこまめに口にする必要があるが、
現在のように数多くのコンビニやスーパーがなかった時代は、
空腹を感じたからといってすぐに食べることはできないし、
歩みを止めれば日が暮れてしまう。

昔の旅人にとっては、多少の空腹で歩き続けることはごく当たり前のことだったはずだ。

旅装に身を包んで山谷を越え街道を歩く昔の旅の様子は
牧歌的にも思えるが、人知れずヒダル神に出会って命を落とす危険もあった。

この危険を人々は妖怪の姿で記して、
空腹を我慢しすぎ低血糖におちいらないように広く戒めたのだろう

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