[家重]2 家重様の目と耳になってはならぬ

[家重]1 まいまいつぶろと呼ばれた将軍
の続きです

忠光
徳川9代将軍となる、家重
障害を持ち、言っている事が誰ひとり聞き取れなかったのだが
唯一、聞き取れる人物が現れた

大岡忠光
大岡越前忠相の遠い親戚です

大岡越前はそれまで会ったことがなかったが、親戚ではあるので身を案ずる

家重の強い希望で、小姓、すなわち身の回りの世話係りに抜擢されるのだが
この先、つらい運命が予想される

家重は将軍となる訳だから、だれひとり言っている事に逆らえない
ただ、今までは誰も聞き取れなかったが故に、言っていないに等しかった
これからは違う
忠光を通じて言葉を発する
もし、忠光の意思が入り込むとすれば
忠光自身に有利な言葉に変えられるとすれば
政治は忠光の意のままになる

忠光が完璧に清廉な人物でなければならない
まず、そこが重要

もし、そうだとして
常に忠光は疑いの目で見られるだろう
恨みや、やっかみの標的になるだろう
一生を通じて、耐えられるだろうか

忠光が自覚して自分の意思を入り込ませないようにするとしよう
忠光が成人して、自分なりの価値観や正義が生まれてくるだろう
それを100%捨てなきゃならない人生
人間として、耐えられるだろうか
それは幸せなのだろうか

大岡越前は忠光を呼び出した

そなたは決して、家重様の目と耳になってはならぬ
家重様は目も耳もお持ちである
そなたはただ、家重様の御口代わりだけを努めねばならぬ

忠光はその言いつけを生涯守り続けた
忠光という人物が素晴らしかったからだが、それだけではなかったろう

家重の人柄がそれを可能にしたんだと思う
忠光は心底家重のためになりたいと思ったし、
家重もその気持ちに答えた

家重はずっと手が震えているから、筆も持てない
できる事は本を読むこと
ページをめくるのも大変だが、苦労しながら本を読んでいた
書き留めることもできないし、再度読み直すことも大変だから
1度読んだ本の内容は全て覚えてしまおうとした
極端な記憶力の良さが身に付く

忠光は、そんな家重に驚き
自分もその知識を吸収していく
楽しくて仕方ない日々
仕事だからということを越えて
心から尊敬できる人に出会え
常に一緒にいることができたのだ

大岡越前の心配は杞憂だったかも知れない

[歴史]シリーズはこちら(少し下げてね)

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