劇作は最高のしょうもない文学

江戸の娯楽をいくつか書いてきましたが
今回は、江戸の文学

とは言いましても、堅苦しいのではありませんで
しょうもないやつです。

杉浦日向子さんの、「江戸へようこそ」からです。

戯作
江戸の文学に大きく戯作(げさく)と言われるジャンルがあります。

洒落本、滑稽本、読本(よみほん)、人情本、草双紙(くさぞうし)
草双紙は絵の入った本で、赤本、黒本、青本、黄表紙に別れる
内容と対象年齢で色が分かれるんだけど
赤は桃太郎の類いの子供向け、
黒は男の子向けの勇ましいやつ。武勇伝とか仇討ちとか
青は芝居噺が中心のいわゆるおんな子供向け。

黄表紙は、嘘。
実はそんなものは江戸時代にはない。
青本の発展形で、高級って訳じゃないけどちょっと大人向け
子供が読んでたらおませさん。

青本は日に当たると黄色に変色しちゃう。
じゃあ、最初から黄色に塗っちゃえ。

後の時代の人が黄表紙と名前をつけた。
江戸時代には、黄表紙も青本って呼ばれていた。

内容
ちゃんとした正道を行くものに対し、ちゃんとしてないやつ全般が戯作。

ブログでいうと、でーこんのブログ。

時期的に言うと、一番戯作的な戯作が華開いたのは、田沼意次の時代。
その後の松平定信の寛政の改革で弾圧を受けたので、
風刺の文学だと思われがちだけど
全くそんなことはない。

もっと内容がない。
教訓も主張もない。
パロディというのともちょっと感覚が違っていて
当時の流行り言葉がわんさか無理矢理押し込まれている

金々先生栄花夢
「江戸へようこそ」の中で
恋川春町の、金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)が全編紹介されている。
黄表紙、すなわち絵物語なので絵がそのままで
字のところは、読みやすいように杉浦さんが書き直している。

ストーリーは、片田舎の青年が江戸へ出ようと目黒不動に来て
名物の栗餅を頼み、できるのを待つ間に居眠り
その夢の中で、金持ちの養子になり、吉原とかで遊びたい放題
あまりの散財に勘当されたところで目が覚めると餅がつきあがっていた。
やっぱり田舎に帰ろう。
それだけ。

これを教訓と感じ、真面目に働こうという人が十人に一人くらいはいるかもしれないけど
まず、そういう目的では読まない。
黄表紙は、物語を楽しむ文芸ではない。

ありがた山のとんびがらす
うっちゃっておけ煤掃に出よう
等々、当時の芝居とかの流行り言葉が散りばめられているので
口に出しながら当時の口調で読み、本人はご満悦だったんだろうなあ。

今の我々が読むと、
はい?これがまたなんで空前の大ヒット?


こういうのを「茶」というらしい。
おそらく茶化すの茶

明るい無意味、吹っ切れた無目的
腹の足しにもならぬ笑い。

アバウト党の党首である私としては
とてつもなく魅力を感じるのです。

社会の多くがそういった方向を向いている。
子供たちはほぼ例外なく義務教育でもない手習いに通い
当時世界的にも例を見ない85%の識字率。
おそらく、大半は立派な人間になろうと思っているわけではなく
こんなとりとめもない本が読めるようになりたい。

平和って最高!

おそらく弾圧をした松平定信は
どう読んでも風刺的要素がないこれらの文学に
内容として問題ありとした訳ではないだろう。

松平定信のくそ真面目な性格からして、逆
こんなあまりに内容のない文学を読んでいる暇があったら
もっと真面目に働けと

でも、庶民は「茶」の精神で
茶んちゃらおかしいやいっ

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