[百人一首]65 恨みわび~

恨みわび ほさぬ袖だに あるものを
恋にくちなむ 名こそ惜しけれ

薄情なあの人を恨み悲しんで、わたしの袖は涙にぬれて乾く間もないと言うのに。
恋に狂う愚か者よ、と世のひとに指さして笑い者にされ、私自身の名声は朽ちはててしまいそう

相模
出ましたっ。相模(さがみ)
そうです。この前の歌のチャラい藤原定頼の恋人のうちの一人。
ただ、その前に一回結婚しているんですけどね。

お父さんの源頼光(よりみつ)は武勇に優れた武士
政界にも顔が効き、大富豪。
泣く子も黙るマフィアのドンみたい。

その娘だから子供の頃から何一つ不自由したことがなかった。
歌の才能はすでに子供の時から。

そんな彼女にプロポーズしたのは
相模守(さがみのかみ)の大江公資(おおえのきんすけ)

この人も歌人としてかなり名の通った人です。

相模で
相模で一緒に慎ましやかに?
どうもそういうタイプではない。

大江公資も浮気したりします。
大変ですね。

憂さ晴らしに箱根に旅行に行ってくるね。

その道すがら歌を百首詠みます。
そんなすぐに!

で、その歌を箱根権現(はこねごんげん=箱根神社)の社の下に埋めて奉納しちゃいます。
せっかく作ったのにあらもったいない。

ところがその数か月後
相模のもとに、箱根権現から歌が返されます。
ちゃんと、埋めたところと、自分の住所氏名を言って行ったんでしょうね。
返された歌は百首
奉納した百首それぞれに対する返歌。

なんでうちの旦那は浮気するんでしょうね
みたいな歌に対しては
浮気なんかしてないと思いますよ、みたいな

すごくないですか
100に対して100
えらいこっちゃと、坊さんみんなで手分けして頑張ったのかな

で、またまたすごいのが
それに対してまた百首歌を返してます。

いや、浮気してるんですよ、みたいな

カチンと来たんでしょうか
そこまで頑張らなくても。

いずれにしても、お互い、ものすごい能力を持ってますね。

3年で離婚。
京都に帰ります。
田舎暮らしは難しかったでしょう。

帰京後
帰京後、歌人としてとんとん拍子に名をあげていきます。
一条天皇の皇女のもとに出仕してから
数々の歌合せ(歌の競技大会)に出席し、連戦連勝
錦織圭みたいです。

男性貴族六人組の「和歌六人党」を弟子にして、師匠になるほど。

恋愛も実にお盛ん。
その内の恋人の一人が藤原定頼ですね。

数々の経験を重ね、親のDNA、その家柄も踏まえて
相模こそが、泣く子も黙るドンになります。

鑑賞
「恨みわび ほさぬ袖」は
男のために流した涙で、袖は濡れっぱなし。
こりゃ袖が腐っちゃうね、と思いきや、さにあらず(あるものを)
「恋に 名」すなわち、あいつは恋狂いだとの噂話ばかりで名(名誉)が地に落ちて腐っちゃった(くちなむ)
ああ惜しいなあ
と、袖と名を対比させての朽ち競争。

この歌も、歌合わせで勝利したときの歌です。
なんとこの時の年齢は五十代半ば。
さすがにこの時に具体的な相手があっての歌ではないと思いますが

ええっと
あの時のあの人と、さらに何番目のあの人とのことを組み合わせれば、
まあ、こんな感じでしょう。

はい、分かりました。
文句ありません。

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