修飾詞の付かない、塙保己一

塙保己一(はなわほきいち)というひと

実は、前から知っていて、ブログに書こうと思っていました。
渋沢栄一を書いたとき、
次は埼玉三偉人の、塙保己一、渋沢栄一、荻野吟子
その中で、塙保己一をよろしく、とのコメントもいただきました。
その時、「はい、近いうちに」、と言って今までかかっちゃいました。

塙保己一
はなわほきいち 国学者 1746-1821

国学って何かというと
江戸時代に、それより前の昔の事を研究する学問
歴史というよりは、文化的な事が多い
源氏物語の研究とか、そういうの

「はい、近いうちに」から、今までの間に、江戸検定の勉強とかしていると、
塙保己一の名はちょくちょく出てきます。

おお、また塙保己一かい

その度にとても驚くことがあるんです。
不思議だなあ
あの、塙保己一だよなあ

塙保己一なんて独特な名前、二人といるわけないので、間違いはありません。

修飾詞がついていないんです。

どういう修飾詞かというと

「盲目の」

そうなんです。塙保己一は目が見えないんです。

とうとうこの間、一度もこの修飾詞を目にしなかった。

私が最初に塙保己一の名前に触れたのは
塙保己一が盲目でありながら、人一倍苦労して、国学における第一人者になったというエピソード

衝撃的なものでした。

どうしても、障害者となると
障害を抱えつつ、よくがんばって、というところに目がいってしまう。

おそらく本人は、そこじゃなくって、と言いたいだろうと思いつつ。

江戸時代の画家というと葛飾北斎、安藤広重、ぐらいの位置付けで

国学という方から見ると
賀茂真淵、本居宣長、塙保己一。

目?そう言えばそうでしたね、
そんなことより、
ぐらいのもの

大したもんです。

生い立ち
「敢えて触れない」が塙保己一に対する正当な評価だと思いつつ
それはそれでおいておいた上でも
やっぱり気になりますね。

どれだけ大変だったんだろう、って

だって、国学ですよ。
山ほど古文書を読み込んで成り立つ学問じゃないかと。
私なんかは素人なんで、不思議で不思議で。

幼い頃から体が弱かった保己一は、数え年七歳の時に病により失明。
十五歳の時に江戸に出て、按摩や鍼、三味線の、雨富須賀一(あめとみすがいち)に弟子入りします。

ところが、元々不器用な保己一は、全く上達しない。

人生これまでか

悲観して自殺を図ります。

直前で助けられ、師匠のもとに戻ります。

ばかもん!
どれだけ心配したか

すみません。
師匠に迷惑かけてばかりで。

そんなことあるわけなかろう
ただ、何をするにも熱が入らないように見えて
どうしたもんかとは思っていたのだ。
何でも良い、申してみよ

泣きじゃくりながら、師匠に初めて気持ちを打ち明けた。

実は、江戸に来てやりたいことがあったんです。
学問です。
田舎にいるとき
太平記を、全て暗記して、話し聞かせることで生計を立てている盲人がいると聞きました。
四十巻の本を暗記することで妻子を養えるなら、と思っておりました。

でも、やっぱり師匠には言い出せなくて。

学問がしたいんです。

そういう事なら、早く言うて欲しかった。
わしには、学問の事は分からんので、手伝ってやることは出来ん
少しばかりそのための時間は作ってやれる。
やってみるがいい

3年は面倒見よう
それで目が出なかったら
すっぱりあきらめ、田舎に帰ってもらう
それでも良いか?

もちろんでございます。

多目に作ってくれる空き時間、本を貸してくれる人を探す。
本を貸してもらえると
今度は、それを読み聞かせてくれる人を探す
その繰り返し

あまりの熱心さに、少しずつ評判がたちました

雨富さんとこに、えらく学問好きなあんまがいるらしいよ

学問かい
そりゃまた、どんな奴か、一度顔を見てみたいもんじゃ

下手くそなあんまだと知りつつ、ひいきにしてくれる御得意様が現れてきます。
心を込めて一生懸命マッサージ

じゃあまた、続きを読んであげようかの

いつも前回の内容を完璧に覚えているので
面白がって、本読みを買って出てくれます。

そういうお客様からは、お代はいただきません。

隣に松平乗尹(のりただ)という旗本が住んでいたのですが
噂を聞いて感動
多忙を極める人だったので

一日おきに寅の刻(朝四時)から卯の刻(六時)までなら読んでやろう

朝の本読みが始まりました。

余りにも記憶力が良いことに感動し
ある提案をします。

わしの家で、毎月、萩原宗固(はぎわらそうこ)という先生が『源氏物語』や和歌の講義をしてくれる。
お前も一緒に講義を聞いてみてはどうだろうか

えええっ、良いんですか?
ありがとうございます。
ありがとうございます。

萩原宗固も余りの真剣さと
驚くべき吸収の速さに感動

感動の輪がどんどん広がっていきます。

いつも一緒に聞いている松平乗尹は
これは、もうレベルが違うと感じ入り
雨富のところに向かいます。

どうだろう
保己一を、萩原宗固の門人にしてあげては。

その頃はもう雨富も保己一に惚れ込んじゃっていて、大賛成

保己一は国の宝
私はどんな事でも協力する。

国学との本格的な出会いです。

長くなりましたね
まだまだ続きますので
続きはまた明日。

索引はこちら
[人物]シリーズはこちら(少し下げてね)




花カレンダー始めました

修飾詞の付かない、塙保己一」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 修飾詞の付かない、塙保己一、その2 | でーこんのあちこちコラム

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です