バナナの皮の摩擦係数を考える

日曜日、ラジオで学者先生が出ていました。

馬渕清資先生。北里大学の名誉教授です。

おえらい先生ですが
イグノーベル賞を受賞した。

イグノーベル賞は、ノーベル賞に対するパロディというかジョークとして始まった。

「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して送られる。

ジョークとしては世界的に一番規模が大きいかも知れない。
かなり有名で世界中で報道される。

ジョークが下手と思われている日本人ですが
実はかなり連続でいっぱい受賞していて
常連国。

そういうのを聞くとほっとします。

日本人の受賞で有名なのは
たまごっち、バウリンガル(犬語測定器)、カラオケでしょうね。

そんな中、2014年に物理学賞を受賞したのが、馬渕清資先生

受賞テーマ
受賞したのは
「床に置かれたバナナの皮を人間が踏んだときの摩擦係数を計測した研究」

馬渕先生の専門は人工関節
どれだけなめらかに動き、ギシギシしないかが重要。

本の中でも講演でも、「バナナの皮でツルンと滑るように」という表現をしてきた。

古今東西、バナナの皮で滑るというのは
あらゆる漫画での定番ギャグ

一番イメージしやすい。
疑う余地もない。

当然、誰かが以前に調べているだろうと思いつつ
ちょっと不安になった

一応確認しておこう。

ところがいくつか文献を当たるが、調べている人がいない

むきになってどんどん調べていくがどうしても見つからない。

調べる
こうなったら、自分で調べるしかなかろう

摩擦係数を測る原理は単純
板の片側に測りたいものを置く
例えば氷とか消しゴムとか
それで板の片方を持ち上げていく。
滑り出したときの傾きの角度が摩擦係数になる

やってみよう
バナナの皮を置いて
ワクワクドキドキ

ん?
滑り出さない

予想を遥かに上回る角度まで上げても滑らない。

まずい
これはまずい
色んなところで言っちゃっている。
嘘つき教授になってしまう

ここで学者魂に火がついたらしい。

やってやろうじゃないの

条件
考えられるのは、特定の条件によって滑るようになるということ

そうです。
踏んだら滑る

となると、事は単純ではなくなる
板を傾けただけじゃない。

幸いにして本業の人工関節の摩擦係数測定用の機械はある
それを、「踏んだら」と「滑る」の数値にどう使えば正しい測定になるのか

自分で滑って転びながら考える。

この研究のために本業の機械を使うのは申し訳ない
お休みの時に片手間にひっそりと、という研究になる

バナナを食べるのは飽き飽きしてくるので
そこは学生に協力してもらう
ごめん 皮だけちょうだい

剥き方にもコツがあるらしい
皮の横幅が広い方が
測りやすい。

そんなの何とか測れさえすれば2~3回もやれば良いんじゃないの?
と素人の私は思いますが
学者先生は違いますね
「これが正しい測定結果」として発表するには
一定以上のサンプル数と精度が必要なのでしょう。
先生頑張りました。

結果
「バナナの皮は、踏めば滑る」は証明されました
何もないときに比較して1/6の摩擦係数

皮を踏むと内側の白い部分が半透明のゼリー状になる
皮には粘液が詰まった粒がたくさんあり、これが踏んで潰れることが、滑るカラクリなんですね

明治から戦前の日本人の発明シリーズでは
みんな何度も何度もくじけずに試作を繰り返したという歴史があった。

同じ苦労をしている

唯一違うところがあるとすると
何の役にも立たない。

イグノーベル賞たるゆえんですね。

仕組みまで分かったんだったら何かの役に立つのかな

現在のところ 不明

教授は使命感のようなものに突き動かされたんでしょうか

いえ、個人的興味です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です