渡辺(渡部)さんは、妖怪退治と航海のスペシャリスト

わたなべさんは主に2つの経路になる

航海のスペシャリスト
古くはワタリベという。
船の航行を行う職業。
こちらの場合は、「渡部」の字を当てるのが正しい。

ただ、この渡部さんが、今数多くいる渡部さんと直接繋がっているかというと、そうではない。

もう一つの経路が複雑に絡んできます。

妖怪退治
百人一首シリーズで紹介した、とおるちゃんこと、源融(みなもとのとおる)
またの名を河原左大臣。
スーパープレイボーイ。光源氏のモデル。嵯峨天皇の息子。

陸奥(みちのく)の しのぶもぢづり たれゆえに
乱れ初め(そめ)にし われならなくに

その子孫に渡辺綱という人がいる。
妖怪退治で有名な平安時代の武将。
一条戻り橋で出会った鬼の腕を切り落とした。
この人、仁明源氏の養子になるので
嵯峨源氏と仁明源氏の両方に属することになる。
摂津(大阪府)の西成郡渡辺に住んだので「渡辺」と呼ばれることになる。

この渡辺さん
源融、渡辺綱でも分かるように
一文字の名前を付けたがる。
渡辺徹もそうでしたね。
あと、綱が名前に入る人も多い。

合体
渡部さんと渡辺さん。
違うルーツを持つはずなのに
なぜかいつの間にか合体する。
もちろん発音が同じだからでしょうけど。

何でそんなことが分かるかというと
両方とも家紋に星が使われている事が多いから。

渡部さんは航海のスペシャリストな訳だから
航海に星はつきもの。

でも、地名から来ている渡辺綱の子孫の渡辺さんは
星は関係無いはずですね。
なのに星がついている事が多い。

これはどこかで合体しているぞと

同じワタナベなんで、あんじょうよろしゅうに
ってことになったんでしょうね。

高橋さんや橋本さん。橋のたもとの…じゃないんだなあ

名字シリーズ。

橋がつく名字を見てみましょう。

ああ、それ簡単
橋が近くに有ったんでしょう
って
違うんだなあ、それが

橋って
橋ってあの橋だと思いますよね
永代橋のようなBridge。

それもあるにはあるので、一概に間違いとは言えない。
どっちかというと、と言えば、その橋ではない。

梯子(はしご)のはし。
Bridge の橋はかなりの高等建築物。
もし、あの橋を指すなら
大分後になってからの名字ということになる。

あの橋が一般的になる前に
はしと発音するものは
梯子で
神様のところに上っていくもの、という意味がある。

高橋さん
高橋さんは特にBridgeの橋とはほとんど関係無い。

ルーツはなんと日本書紀のに登場する、
高橋活日命(たかはしのいくひのみこと)
ないしは
磐鹿六雁命(いわかむつかりのみこと)
にまでさかのぼる。

酒造りの神様だったり、料理や味噌・醤油などの醸造の神様だったりする。
平安時代に宮中で天皇の毎日の食事を調える内膳司(ないぜんのつかさ)という仕事をしていた人が、天皇から高橋朝臣(たかはしのあそん)の姓を賜った。
この人が先ほどの神様の子孫。
一貫して、神様に捧げる食事のスペシャリスト。

大昔、神様の食事や酒を用意する人は
神殿にハシゴをかけて登り捧げた。

すなわち、高橋さんのハシとは
きざはしと呼ばれた階段状の高梯子、
もしくは、神が宿る高柱のこと。

天皇の料理番みたいな内膳司が
全国から美味しい食材を調達するため
全国に散らばり
次第にその土地に定着していくものがでてきたと考えられる。

橋本さん
高橋さんに比べると、橋本さんの方は、そこまでルーツがはっきりしていない。
梯子を意味して、神職の事もあれば
Bridgeの橋の事もある。

Bridgeの橋の場合は、
古代においてはかなり珍しい、超最新の建造物であるので
大都会だったと思われます。
当時はかなりの都会っこだったと思われます。

やるぜ、橋本さん。ハイカラっ。

田中さんは名字の王者

名字は、氏、姓、名字、苗字の四通りが別々なんですという話をしました。

田中さんは、名字としての意味合いの典型。
名字の王者だと言えます。

姓は朝廷より賜った正式な名前であるのに対して
名字は自分達が好んでつけたニックネームとしての土地の、
もっというと田んぼの名前。
とすると、どうしても田の付くものが多くなります。

田中
藤原氏の藤のつくシリーズや、鈴木さんとかが
辿っていくと1つや、ごく少数のルーツにたどり着くのと全く逆で
田の付くシリーズは、ルーツが無限にあります。

その中でも、一番中心的なのが、田中さん。

田んぼはどんどん開発されていって、広がっていき
そのたびに、新田さんだの、西田さんだのの名字が付いていくわけだけど
一番最初の、ここから始まった、という場所が、田中さん。

本家本元です。
一番多いはずです
全国津々浦々の田んぼグループの中で
必ずひとつは、
ここが元々の中心ね、というのがある。

古田、本田、元田
同じ意味が、古田、本田、元田さんになる
ここから始まったんですよ、の意味。

中田
じゃあ、中田もそうだよね、と言われそう。
もちろん、田中さんと同じ意味合いの中田さんもいるんだけど
田中さんや古田さんがいて、新しく広がっていった先に新田さんがいる。
その真ん中の辺を指して
中田さんという場合もある。
この辺注意が必要です。

鈴木さんは世界遺産

名字シリーズです

鈴木さん
佐藤さんと並んで双壁をなす多い名字、鈴木さん
何とそのルーツをひとつの場所に辿れます

それも何とあの、熊野神社なんです。
ちゅうことは、鈴木さんは世界遺産かっ

そもそも「鈴木」とは
稲穂を積んだもの
鈴をつけた榊(さかき)
笹や篠竹
諸説あるものの、引っくるめて全て
神道の儀式において、神様を迎えるために必要な
神器・神具のたぐい。

聖なる一族ということになります。

元々、熊野神社の神官だった鈴木さん。
その先祖は、古代豪族としてさかえた物部氏になります。

何といっても特別な人気を誇った熊野神社。
宇多法皇に始まり、法皇の熊野神社詣での回数は100回では足りません。

鈴木さんも全国を布教活動で回っていくのですが、
それぞれの土地土地で子をもうけ、鈴木姓は全国にポツポツ散らばります。

何といっても鈴木姓は熊野神社を即イメージできるので大人気
最初はそれぞれの土地で点でしかなかったものが
急速に広がって行きます。

プライドのある鈴木姓の人たちは、すずきのよしみで武士団を形成していきます。
三河の鈴木さんを代表とし、関東、東北、四国にも、武士の一族が多い。