宇田川榕庵。江戸時代に化学を究める

江戸の理系力シリーズ。
天文学、数学、医学、遺伝学、機械工学、博物学、本草学と進めてまいりました。
そういうと、化学って出てませんでしたね

江戸時代に、試験管とかフラスコとか無さそうだし、
いくらなんでも無理なのかな

いえいえ、どっこい

宇田川榕庵
うだがわようあん 化学者 1798-1846

江戸時代後期の津山藩(岡山県津山市)の藩医です。

元々は、大垣藩の藩医の息子
参勤交代制度のメリットだと思うんだけど
江戸に住んでいる、江戸詰め、と言います。
お父さんは、同じく江戸詰の藩医、宇田川玄随が師匠です。

息子さん、優秀ですね。養子にちょうだい。
はい、どうぞ。

ってことで、14歳で養子になったので、宇田川姓
岐阜から、あっという間に岡山です。

哥非乙(こうひい)説
化学者と言いつつ、他の事から話し始めるのは気が引けるのですが
色んなことやっています。

いっぱい本も出しているんですが、まずは19歳の時に出した本。
「哥非乙(こうひい)説」という本です。
コーヒーの産地、効用を説いたものです。
ハイカラですね
Coffeeの日本語表記である「珈琲」は、宇田川榕庵が最初。

喫茶店の珈琲館は宇田川榕庵を恩人と崇めないといけません

『西説菩多尼訶経』と『植物啓原』
ショメルの百科事典を読んだ宇田川榕庵はびっくり。

日本では、植物と言えば、観賞のための園芸として、より奇異なものを作り出すための品種改良
あるいは、本草学、すなわち薬草として有用なものを探す。

西洋には全く視点の違った植物の学問があるじゃないか

植物自体の構造や生理を探求する

物事には、それが形作られ、働きを持つさらに元となる仕組みがあったのか

分類や効用や改良は散々行ってきたけど
「植物学」と呼べるものに体系立てていくのは、榕庵からだと言って良い。

西説菩多尼訶経(ぼたにかきょう)って変な名前でしょう。
本が、お経のように折り本形式になっているから。
「菩多尼訶(ぼたにか)」というのは、ラテン語で植物学を意味するbotanicaからとっています。
何ともハイカラなお経があったものです。

その後、もっと本格的な植物学の『植学啓原』を出版しています。

榕庵の特色として、さっきの珈琲もそうだけど
現在の学問で使われている言葉を思いっきりいっぱい産み出している。
雌花、雄花、花柱、葯、柱頭などの訳語は全部、榕庵です。

舎密開宗
さあ、いよいよ化学ですよ。

物事のもう一つ元の研究という視点をおそらく日本人で初めて持った榕庵
化学に興味が向いていくのは当然の流れでしょう。

イギリスの化学者ウィリアム・ヘンリーが1799年に出版した Elements of Experimental Chemistry を
J・B・トロムスドルフ(de:Johann Bartholomäus Trommsdorff)がドイツ語に翻訳、増補した
Chemie für Dilettanten を、
さらにオランダの Adolf IJpeij がオランダ語に翻訳、増補した
Leidraad der Chemie voor Beginnennde Liefhebbers

うーんややこしい。
「それ」を読んで訳したのが「舎密開宗」(せいみかいそう)

日本の化学の夜明けでございます。
やりました。
イッヒリーベボクノフネですね

単純な翻訳ではなく、その他のあっちこっちの化学書から
あれやこれやを追記しているから
新たなオリジナルの化学書といっても良いくらいのもの

「舎密」とはオランダ語の「セーミ」に当て字をしたもので、開宗とは開くという意味。


さあ、ここで作り出した言葉は?

酸素、水素、窒素、炭素、白金といった元素名
元素、酸化、還元、溶解、分析といった化学用語
細胞、属といった生物学用語

すごいです。
何から何まで。

何と日本ではじめて、現在の化粧せっけんに近い石鹸を製造しています。

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