[百人一首]91 きりぎりす。えっコオロギ?

きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに
衣かたしき ひとりかも寝む

こおろぎが鳴いている寒い夜のむしろの上で
私は自分の衣を片敷いて
一人寂しく眠るのだろうか

百人一首シリーズも残り少なくなって参りました。
途中飛ばしたところもちゃんと埋めて
純粋にあと10首
カウントダウンでございます。

キリギリス
出ましたよ。出ました、キリギリス
ギュリギュリヒュウィーッ

(ヒガシキリギリス)

と思ったら、何と当時のキリギリスってコオロギの事
あらま

キュロコロコロコロ
(エンマコオロギ)

でも好き嫌いで言うと、エンマコオロギの声が一番好きなので良いんじゃないでしょうか
この歌にも合っていると思います。

もうすぐ、虫の声の時期も終わっちゃうなあ。
来年こそは聞き分けられるように頑張ろうっと。

後京極摂政前太政大臣
後京極摂政前太政大臣(ごきょうごくせっしょうさきのだじょうだいじん)
藤原良経(よしつね)
名門の御曹司で、若くして太政大臣になります。

ただ、激動の時代。
九条兼実(かねざね)の息子で、お父さんの兼実が政争に敗れたため、一度冷や飯を食います。
ただ、そのあと、見事に復活を遂げるのでこの時代にしては上々の人生。

歌人としても極めて高い評価を受けていて
2~3首だけでは彼の歌は語れませんよ、と言われている。

死ぬときだけは悲惨で
寝ていたら、天井に忍び込んでいた何者かに、槍でグサッ

鑑賞
情景が思い浮かびやすい歌です。

さむしろ、って何かなんだけど、狭いむしろなので、貧弱な寝床がイメージできます。

衣かたしきがポイントですね
片敷き、で片方しか敷いていないので寒い。
当時、布団って、昼間着ている服を広げてバサッと体にかけて寝る。
いつ洗濯するんでしょうね

もし二人で寄り添って寝るとすれば、二人分の着物が上にバサッ。
温かいなあ。

短歌って、31文字で表現しないといけないから
表現の幅を広げるために、いっぱい色んな工夫をする

その中の一つが本歌どりと言われるもの。
特にこの歌は、対象となる本歌は一つではなく複数。
明らかに本歌というのだけでも、二つ

さむしろに 衣かたしき 今宵もや われを待つらむ 宇治の橋姫(古今集)
吾が恋ふる 妹は逢はずて 玉の浦に 衣かたしき ひとりかも寝む(万葉集)

百人一首の
3.あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む ◆柿本人麻呂
だって、ひとりかも寝むシリーズなので、本歌と言えなくもない。

著作権みたいな難しいことを持ち出すと短歌は成り立ちません。
歌はみんなのもの
似てちゃダメじゃなく、似た有名な歌の世界観を借りて、そこにオリジナルのイメージを加えていく。

そういう、助け合いの芸術。

この歌だけなら、寒いことのグチを言っているだけだけど
本歌をイメージさせることで、女性を愛する歌になる。

さらに言うと、歌った時期が重要
奥さんを亡くしたばかりの時期に詠んでいる

名門の御曹司にしてはとても珍しい少数派なんだけど
愛妻一筋

妻を亡くした時、自殺も考えたほど。

寒いよお
お前のいないこの部屋には、なんの温もりもなくなっちゃったよ
声がした気がしたけど
虫さんだったのかい

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