[天皇]76 近衛天皇。崇徳上皇の不幸、生きながらにして天狗になる

天皇シリーズ
崇徳天皇が弟に譲位して崇徳上皇に
不幸の後半戦になります。
前半戦はこちら
[天皇]75 崇徳天皇。不幸の前半戦

近衛(このえ)天皇
1141~1155年

近衛天皇は、崇徳天皇の腹違いの弟
鳥羽上皇にうまく言いくるめられて、譲位し
自分が院政を執れるはずが相変わらず、鳥羽上皇が院政
近衛天皇は僅か3歳で、崇徳天皇が23歳の時

それでも、時がたてば状況も変わり
良い方向に展開するのではあるまいか

女性と次期天皇候補を整理していきましょう。
鳥羽上皇は得子(美福門院)を愛し、近衛天皇が生まれます

崇徳上皇の皇后は聖子です。
聖子には当初子供が生まれず、近衛天皇を養子として、自分の息子として育てます。
崇徳上皇には、兵衛佐という別の女性との間に男の子が生まれます。
重仁親王(しげひと)
この子を天皇にしてやりたいというのだけが崇徳上皇の望みです。

重仁親王は、得子(美福門院)が引き取って養母となります。

鳥羽上皇と得子はこの時点では、重仁親王を排斥しようとは考えていなかったと思います。
もともと、近衛天皇は病弱だったので、子供が生まれない可能性がある
崇徳上皇の息子を養子にして、保険をかけておこう

崇徳上皇の唯一の望みが叶えられる事も十分ありました。

ところが情況が変わります。
雅仁親王(後の後白河天皇)に男の子守仁親王(後の二条天皇)が生まれます。
雅仁親王は崇徳上皇や近衛天皇の弟
母親は、崇徳上皇と同じ璋子(待賢門院)

この守仁親王も得子に引き取られ得子は養母となります。

整理すると、徳子は実子として近衛天皇、養子として重仁親王と守仁親王を育てるということになります。
となると、重仁親王と守仁親王は横一線

鳥羽上皇は崇徳上皇が大嫌いなので
重仁親王に皇位を渡したくない
となると守仁親王が一歩リード?

いえいえ、そうは単純ではないのです。
重仁親王は先帝の息子。
守仁親王のお父さんは天皇になっていない。

普通に考えると重仁親王の方が有利なんです。

その状況下で、病弱だった近衛天皇が17歳にして亡くなってしまいます。
久寿2(1155)年です

重仁親王だな
そう思われました。

ところが、鳥羽上皇の出した結論は
重仁親王でも守仁親王でも無かった

雅仁親王

守仁親王が不利なのは、お父さんが天皇じゃないからなのね
じゃあ、中継ぎとして天皇やってもらいましょう。
すぐに譲位させればいい。

後白河天皇の誕生です。29歳です。

崇徳上皇としては、これで完全に夢破れました。
息子に天皇をさせてやることもできないし、自分が院政をすることも完全に亡くなった。

怒り心頭の崇徳上皇
でも超ワンマンの鳥羽上皇には逆らえない。

その翌年、保元元(1156)年、鳥羽上皇が重病に陥り、そのまま崩御する。

崇徳動くか
噂で持ちきり

崇徳同様にあとがない面々が崇徳のもとに集まり出した。

動くぞ動くぞ

ひとつみんなが思い違いしていたのは
後白河天皇が、中継ぎなんてな事を全く思っていなかった事

崇徳よ、動くなら動け
こっちはそれ以上の兵を集めてぶっ潰してやる
中継ぎなんて呼ばせない。

保元の乱へ向けてそれぞれが動き出す。

保元の乱

おそらく、崇徳上皇の思い以上に、進んでしまったのだろう。
集結はしたものの、ぐだぐだしているうちに、後白河側に先制攻撃され、惨敗

崇徳上皇は讃岐に配流
天皇ないしは上皇の配流は、淳仁天皇以来、実に400年ぶり

崇徳上皇は、思った以上に担がれた部分はあったにせよ
事を起こした事は事実
素直に謹慎せざるを得ない

上皇とは思えないひどい扱いを受けつつも
仏の道に没頭し、ただ大乗経を写す毎日

数年経って、膨大な大乗経を写し終えた時
その大乗経を弟、後白河天皇に贈った。

こんなに反省しております。

ところが、後白河天皇は、一目も見ることなく
送り返す

今まで不幸の続いた人生
それでも耐えてきたし、
自分が起こしてしまった事への報いだとも思っていた

ところが、送り返された大乗経を見て、完全に壊れた。

今まで、貴族の間では、菅原道真の例もあり
怨霊の祟りと言うものが信じられてきた。

ただ、それまでは不幸な死に方をした人がいて
何らかの現象が起きたときに、周りの人たちが怨霊だと言ってきた。

自らの意思で、生きながらにして鬼になり天狗になると宣言したのは
崇徳上皇が初めて。

髪を切ることもなく、爪を切ることも無かった
ただ、恨みを形にしようとした。

そして最後、
「日本国の大魔縁となり、皇を取って民となし、民を皇となさん」

自らの舌を食いちぎり、その血潮で大乗経に呪詛の誓文を記し、海底に沈めた。

[天皇]シリーズはこちら(少し下げてね)

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