[富岡日記]3 盆踊りが思わぬ方向に。

和田英の富岡日記、やっぱり有名なのか
[富岡日記]2 神様お願い
の続きです。

富岡製糸場の女工さん、和田(横田)英(えい)さんの「富岡日記」からです。

皇太后陛下皇后陛下御行啓
6月、皇太后、皇后陛下が見学されることになった。
こりゃ大変

ユニフォームも今までのより小綺麗なものに変更
手拭い等も新しいものを新調

下見に来られた方があまりに顔がおしろいで真っ白だったので
ついつい笑ってしまった

ひどく怒られ、
万が一でも当日笑うようなことがないように、きつく言われました。

当日(以下、日記より)
一生懸命に切らさぬように気を付けて居りました。
初めは手が震えて困りましたが、心を静めましてようよう常の通りになりましたから、
私は実にもったいないことながら、
この時竜顔を拝さねば生涯拝すことは出来ぬと存じましたから、
よく顔を上げぬようにして拝しました。
この時の有難さ、只今まで一日も忘れたことはありませぬ
この時、もはや神様とより外思いませんでした。

盆踊り
無事に終わり
両陛下より、お酒を賜ったとの事

みんなが集まり、ありがたく頂戴しようということになりました。

今日は何をしてもよろしい
芸のあるものは芸をすることになりました。

長野出身の英たちには
お前さんがたのお国には盆踊りがあるということだが
知っておいでなら踊ってください。

最初は遠慮していましたが
数人踊り出すと、だんだん増えていき
英たち2~30人が踊りました。

役人さんたち大喜び

ところがそれから思わぬことになりました。

よほど盆踊りが気に入ったと見えて
大切なお客様が来るたびに
盆踊りを披露せよとかり出されます。

断っては角が立つので踊りますが
製糸場と何の関係があるのか

夕涼み
暑くなってくると、病人が出るようになりました。

洋医が言うには、
大勢部屋に閉じ込めておくから病気になるのだ
夕方から夜8時半くらいまで、広庭に出して、運動させるように

毎夜取締役が監視しながら
はい、遊びなさい。

急に遊べと言われても、何をしていいものやら

困っておりますと、例の話が再燃します。

それでは、盆踊りをしなさい。

他にすることも思い付かないので、盆踊り
他県の人もやることがないので混じってきます。

ここに思わぬライバルが。

山口県から来た人たちは50人ほどもいるのですが
お役人の人たちから、山口県の人たちも踊るようにと。

仕方なく山口県の人たちが踊り出すと
これがなんとも品の良い、日本舞踊のような盆踊り。

競争って訳ではないのに、昼休みに練習するまでに。

あるとき、お役人が高張提灯を山口県の方に持っていっちゃって
長野県側は真っ暗

これには、腹が立った。
別にやりたくてやっている訳じゃないのに
どういう扱いなのか
もう今後一切、庭には出ない。

そうなると庭はぎすぎす
お役人たちもほとほと弱りました

英さんはみんなのところを回り説得
庭には出ましょう
盆踊りはもうやめましょう
という事で決着。

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和田英の富岡日記、やっぱり有名なのか

坂本龍馬と女性、というシリーズをやりました
平井加尾、千葉佐那、楢崎お龍、大浦慶

基本的に「龍馬が惚れた女たち」という本に基づきながら書いていきました。

その本の中で、著者原口泉さんが、
日本にも大浦慶のようにすごい女性が色々いると
十何人かの女性を紹介してくれている部分がありました。

その中で、和田英という女性がとても気になりました。
和田英(えい)

富岡製糸場で働いていた女工さんです。

えっ
富岡製糸場で働いていた女工さんが何でまた、
そんなに日本を代表するほどのすごい女性なの?

富岡製糸場って富国強兵殖産興業の象徴で
世界遺産にもなっている

ただ、文明開化でみんな頑張っていたんだろうなと思いつつも
実際に働いている女工さんたちはそんな綺麗事じゃなかったんだろうな

ああ野麦峠や女工哀史でのイメージ
超過酷な労働で、まるで監獄
劣悪な労働環境のため、結核とかでバタバタ倒れるものが出ても許されない

そんなイメージが頭の中で完璧に出来上がっていたからです。

富岡製糸場が違っていたのか
和田英さんが違っていたのか

このイメージが根本的に覆されました。

富岡製糸場は政府が鳴り物入りで作ったものだから
何としても成功させないといけない
女工さんを募集するんだけど誰もなり手がいない

たまたま英さんのお父さんが、人材募集係りでほとほと困っていた

人の噂というのは尾ひれがつくので
あたかも地獄の場所かのごとく

そもそも、自分の所にちょうどいい年齢の娘がいるのに申し出ないのが動かぬ証拠だと。

ここまで来ると
あっ無理矢理やらされたんだ、と思うでしょう

違うんだなあ
それを聞いた本人
えっ、私も申し出て良いの?
やるやる絶対やる

何でこういう気持ちが分かるかというと
本人が後に日記を「富岡日記」として本にしているからなんです。

この辺の事も後でまた書こうと思いますが
英さんの性格がなんちゅうか前向きというか
どんなに大変でも悲壮感なんてものがまるでない

そんな英さん
一年で製糸の技術を習得しちゃって
富岡製糸場を辞めちゃいます。

そして、お父さんのいる地元に戻ります。

なぜかというと、地元の長野県松代市で
日本初の民営蒸気器械製糸工場、六工社が作られようとしていたから

経営者ではありませんが
指導者として携わる事になります

ある日、製法で経営者とぶつかります。
そんなやり方だと品質の良い生糸は出来ません!

何だと生意気な

ここで提案した解決方法がすごい

分かりました。
それぞれの製法で製品を作ってみましょう。
その製品を市場に出しましょう。
高い値段がついた方に従うって事でどうでしょう。
負けた方も恨みっこ無しということで

勝っちゃうんだな、これが。

普通は論争になると感情的になっちゃって
相手を罵倒したり、人間関係がこじれちゃうものだけど
最初から恨みっこ無しの方法を提案するというのは
出来ることじゃない。
しかも上司相手

男尊女卑の時代、普通の平社員の女性が
当時の輸出高トップの製糸業の基礎を築いて行くってありますか
隷属されていたはずの女工さんです。

「龍馬が惚れた女たち」には、市場価格で判断してもらったという
エピソードだけ書いてありました。

今、歴史検定の勉強で、大学受験の日本史Bの参考書を頑張って読んでいるんですが
出てきたんです。
和田英の書いた日記は?
富岡日記

えっ、やっぱり有名なのか

気になって、富岡日記を読み始めました

面白い!
この人、ほんとに良いわ、性格というか考え方というか

まだ読み始めたばかりですが
次回、紹介しようと思います。

[人物]シリーズはこちら(少し下げてね)

さぎ草伝説。その2

さぎ草伝説。その1
の続きです。

常盤姫懐妊となると、9人の側室たちは存続の危機
何とかして追い落とすべく、一致団結して、計画を練ります。

内海掃部
世田谷城の花が常盤の方ならば、美男の掃部は紅葉よな

世田谷城で誰もが噂する内海掃部(うつみかもん)という美男子がおりました。
美男子だけではなく、仕事もできて性格も良い、殿にも可愛がられている完璧なる青年
今で言うと、福山雅治のよう

まず、常盤姫が内海掃部と怪しいと噂を流します。
お腹の子の父親は内海掃部なのではないかと。

何の根拠もなく、何を見たわけでもなくても
あれだけの美男美女ならあり得るんじゃないと
それだけの理由で、噂が広がっていきます。

とうとう、殿の耳にも入るようになるんですが、全く取り合いません。

つまらん

ところが、ある時、殿の側に仕えている内海掃部の懐から、
以前殿が常盤姫に与えた秘蔵の袱紗(ふくさ)と、
一首の和歌が、殿の目の前に落ちたのです。

殿が拾いあげて見れば、常盤姫の筆で、
おもいあまる 涙は色にいずるとも 袖のしがらみ 浮名もらすな

何じゃこれは
内海掃部を問い詰めますが、全く見たこともないもの
何と言われようが、身に覚えがございません、としか言えません。

内海掃部殺害指令
裏切られたと思い込んでしまえば、
愛が強ければ強いほど、反動が大きい。

内海掃部は父とともに、まずは距離を置いて、冷静になってもらうのを待とうと
小田原へ退きます。

逃げおったな。それこそがやましいことの証拠じゃ
討て。
追って討つのじゃ。

ただ、誰もそんな役割をやりたくありません。
殿と目を合わさぬように、端へ端へ

大場入道景茂の孫「新左衛門吉隆」が進み出ました。
弱冠16歳

私めが

いくらなんでも若すぎるとためらいましたが、
他に進み出るものはなし。

吉隆はたった一人で、小田原へ

何用じゃ

若造が一人でやって来たので、門が開けられました。

吉隆は刀に手もかけずに堂々と進み出ます。

君の恩は山よりも重く、海よりも深い。
たとえ筋の通らぬこととは言え、
君命とあれば潔く死を選ぶのが誠の武士の道ではありませんか

あまりに真っ直ぐな物言いに
何を思ったのか、父は、奥へ入っていきました。
これが最後と察し、息子の死を目のあたりに出来なかったのかも知れません。

残された掃部は茫然
そこへすかさず刀が下ろされました。

逃亡
残されたのは、常盤姫と、お腹の子供
同じ運命となるでしょう。

仕えるものたちは、身を案じ
お逃げなされい

でも私は本当に全く身に覚えのないことなのです。
身の潔白を晴らすためにも逃げる訳には行きません。
それで命が絶たれるならば
それが殿のお望みならば
私、命は惜しくありません。

それは違いますぞ、姫
姫はそれで良いかも知れませんが、お子はどうなされる
それほどまでに思うておられる、殿のお子ではありませんか。
まずはお産みなされ
そのあとどうなされるか、その時もう一度お考えなされるが良い

実家の奥沢城へ
ただ、少し不思議です。
真っ直ぐに奥沢城へ向かっていないのです。
どこに寄ろうとしたのでしょうか

まもなく、追っ手が向けられました。
そして、あの常盤塚の場所でとうとう追い付かれてしまいました。

ごめんなさい。ごめんなさい。
お腹の子供に謝ります。

これを殿に

歌をしたため、自害しました。

君をおきて あだし心はなけれども うきなとる川 沈みはてけり

(恨みはしません。いつか分かってくださるはずですから)

その後
そのあと、どれくらい経ったでしょうか
すっかり塞いでしまった殿の前に
一人の女性が訴え出ました。

申し訳ございません。
あの文は私が書きました。
あのような事に使われるなんて全く分からなかったのです。

以前に常盤姫に仕えた女性で
姫の字の癖が良く分かっており
手先が器用だったので、姫にそっくりの字を書くことが出来ました。
それを知った側室たちから言われるがままに歌をしたためたという次第です。
袱紗は姫の部屋から盗み出したのでしょう。

わしはなんてことをしてしまったのだ

後悔してもしきれない、懺悔の念

少し時がたち、気持ちが落ち着いてきたかと思ってもやっぱり思い起こす。

わしはなんてことをしてしまったのだ

罪なき内海掃部を殺してしまったこと。
常盤姫を死に追いやったこと。
あの楽しかった日々が思い出される。
そして、見ることの出来なかったわが子。

神社や寺や塚を作り、供養
あの思い出の野からさぎ草を持ってきて植えた。

さぎ草はさぎとなり、天の常盤姫の元へ飛びたつ。
足に、殿のしたためた歌を結び付けて。

[人物]シリーズはこちら(少し下げてね)

さぎ草伝説。その1

世田谷ウォーキングでさぎ草伝説を書くと言ったのに
その後2日連続でウォーキングしちゃったもので、割り込み入れてごめんなさい。

さぎ草伝説
さぎ草伝説の主役は、常盤姫(ときわひめ)
相手方は、吉良頼康。戦国時代のお殿様です。
世田谷城の城主。豪徳寺の隣です。
吉良氏は足利氏の親戚で、江戸時代に例えると徳川宗家に対する御三家的な位置付け
世田谷区を中心に広大な領地を持っています。

常盤姫は、その家臣の大平出羽守の娘
出城の奥沢城を守っています。九品仏(浄真寺)の場所です。

ある日、頼康が鷹狩りに出掛けました。
奥沢城の近くまで行き、白鷺を見つけました。

行けっ
鷹を放ち、見事捕らえます。
殿自ら、落ちた白鷺を捕まえ、良く見ると、足に何かが結びつけてあります。

狩人の今日はゆるさん白鷺のしらじらし夜の野辺のあけぼの

どういう意味じゃろか
美しい筆使いに魅了されてしまいます。

気になり出すと、どんどん思いが膨らみ
まだ見ぬ女性に恋心を抱くようになります。

小姓の天王丸に、
なんとしてもこの文の主を探し出せ

ははっ

殿も無茶言うよなあ
どう探すよ、これ

とりあえずやみくもに歩き回り
すれ違う人全てに参考になる情報を聞く

来る日も来る日も手掛かりなし

疲れはてて、気づくと等々力(とどろき)渓谷
清流に喉を潤して休憩していると
声をかけてくるものがいる

わが主君の一羽の鷺が、篭を抜け出し、行方知れずとなりました。
もしや、ご存じないでしょうか。

えええっ

大平出羽守は常盤姫を溺愛し、片時も側を離れようとしません。
父に愛される喜びはあるものの、不自由な身の上にもの憂い毎日を送っておりました。
篭の中の鷺を自分と重ね合わせ、
七夕の日に、文をつけて解き放ちました。

殿に
野をかけ山をかけ、来る日も手掛かりがなかったこと
ところが、偶然にも出会いがあったことを興奮しながら話しました。

ええい、話が長い。
して、その主は誰だったのじゃ

それがですねえ。

殿には未だお目見えなきも、既に御存じのお方、
誰あろう奥沢城主大平出羽守様の愛娘「常盤姫」にてございます

えっ。

頼康は、常盤姫にあったことはなかったのですが
美人の噂が高かったので、
何度も歌を贈っておりましたが、返事をもらえていませんでした。

かくなる上は何に変えても

京都のお公家さんに嫁いでいた、お姉さん「淀君」に使いを出し
なんとかご尽力いただけませぬか

私でお役にたてるならと、淀君おん自らが奥沢城に向かいました。

大平出羽守は恐縮しかり
喜んでお受け致します。

奥沢城から世田谷城への輿は、それはそれは華やかな行列となりました。
頼康には9人の側室がいましたので、10人目の側室となりました。

幸せな日々
それ以来、頼康の寵愛は、常盤姫へと一身に集まりました。

わしらを結びつけてくれた、あの鷺の野に、一緒に参らぬか
静かにうなづく常盤姫と共に、鷺を見つけた野に行きました。

するとどうでしょう。
野の一面に、白い花が咲き乱れたのです。
しかも、その花のひとつひとつが
まるで鷺が羽根を広げたかのような形だったのです。

二年の月日が流れました。
待ちに待った日がやって来ました。

常盤姫ご懐妊

城中が沸き立ちました。

その中で苦々しく思っている人が9人
そうです。他の側室たちです。

妬み恨みが渦をまき
その矛先は常盤姫へ

続きは明日といたしましょう。

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