シーボルトの続き。あの事件とその後

シーボルトの激烈日本愛。でも何かある?
の続きです。

江戸へ
江戸で一通りの仕事を終えたシーボルト一行

予想通り、色んな人が先生にぜひお会いしたいと訪ねて来ます。
そのために、外国紹介グッズを持ってきた訳ですから
待ってました!

高橋景保(かげやす)がやってきました。

ひょっとして?
そう
天文方の高橋景保
高橋至時(よしとき)の息子です。
高橋至時は伊能忠敬(ただたか)の師匠ですね

本や地図で外国の状況を説明

やっぱり高橋至時の息子
いてもたってもいられません。

先程見せていただいた本と地図
大変貴重なものだとは存じますが
何とかお譲りいただくわけにはいきませんでしょうか
おいくら程、お支払すれば

お分かりいただけるとは思いますが
値段のつけられるようなものではございません。
ただ、先程からお話させていただいて
あなた様の熱意には感服いたしました。
あなた様にならという気持ちも一方ではございます。
どうでしょうか
交換条件をつけさせてください。
私としては、日本のことが深く知りたい
その目的に合い、この価値に見合うもの
それと交換させていただきたい。

一つしかないですね

地図には地図
伊能忠敬のあの日本地図

でも
ことが重大すぎます。
半生を費やした伊能忠敬の苦労
コピーがある時代ではないから
複製を作るのに年単位の時間がかかる
国家の重大機密として門外不出で大切に保管されている。
今、国宝に指定されているほどのものです。
そもそも、天文方で保管しているが高橋景保の所有物ではない。
まして、相手は外国人

でも、この男、シーボルトなら、という気持ちもある
そちらの国の地図は下さい、でもこっちの地図は渡せません
というのも、筋としてどうなのか

渡してしまうんです。

長崎で
長崎に帰ったシーボルト一行
持ち帰った植物の苗をもとに、出島に植物園を作り
1400種もの植物を最終

例えばシーボルトの栽培したお茶はオランダ経由だかでジャワに渡り
それをもとにジャワでお茶(紅茶)の栽培が始まったりしています。

ある時

お滝さん
ちょっと里が恋しくなったから
帰ってきて良い?
大丈夫、すぐ戻ってくるから。

早く戻ってね。
愛してるわ、チュッ

シーボルト事件
帰る筈だった船が、出発前に台風で壊れてしまいます。
その中に、何と日本地図が

何だ何だ、これは何だ

即刻、地図を返還せよ

断固拒否します。
素直に返せば良かったのにね

一方で、
全ての責任は私にあります。
私は一生人質になっても構いませんから
高橋さんや弟子たちに罪が及ぶことは何卒お許しいただきたい。

このシーボルトの申し出は拒否されます。

高橋景保は厳しい取り調べ中に病死してしまいます。

家族は遠島
関わったと思われる弟子たちにも処分が及びます。

幕府としても、シーボルトの人柄や仕事ぶりに信用し
ことごとく決まり事に異例措置を施してきたのに
裏切られた感は強烈に持っていたと思います。

結果として、国外永久追放、再入国禁止。
娘イネが2歳の時です。

日本学
面白いですね
犯罪者になった筈のシーボルトなのに
オランダをはじめとし、欧米諸国で大歓迎されます。

日本研究の成果が発揮され
いくつかの本も出版され

日本学と名付けられる程の一大ブームを巻き起こします。

日本は外国から正しく理解されていなかったと思われがちですが
そのお陰で、かなり正確に理解されています。

既に、シーボルトが集めた「日本学」の資料は
ジャワティーの例から分かるようになった
ずいぶん持ち出されていました。

各地名をオランダ表記に直した日本地図さえ出回っています。

実は先程の難破船のくだりは
後に話を面白くするために、小説で書き加えられたフィクションのようです
本当は単純に誰かの密告
間宮林蔵の密告という説もありますが
これはまたこれで話を面白くするためかなと

とすると
地図の返還拒否は
実はもう持ち出されていて手元になかった、とも考えられます。

いずれにしても、シーボルトの日本愛には嘘偽りはなかったと思います。
シーボルトのお陰で、大きく日本の医学が進歩したのも紛れもない事実です。

シーボルトは再婚し、二人の子供をもうけます

一方の滝は、泣き暮らし、と思いきや
こちらも再婚
良いじゃないですか
お滝さんだって幸せにならなきゃ。
楠本さんと結婚したので、楠本イネです。

ペリー来航
シーボルト事件から24年後、ペリー来航です。

実はその前から、
ペリーが大船団率いて、日本に行くぞというのは
世界に知れ渡っています。

その乗組員を広く公募もしています。

その話を聞き付けたシーボルト

はい私も!

鬼に金棒ですよね
こんなに日本について詳しい人はいません

これが実現していれば、かなり面白い歴史になっていたと思いますけど
ペリーさん、断固拒否

ロシアのスパイだと疑われた。

少なくともロシアはあり得ないと思うけど
一度スパイに疑われちゃうと、難しいんでしょうね

そんなペリーのお陰で、日本は開国。
ここも、シーボルトの日本学はかなり役に立っている。

ペリー来航は近くまた書く予定ですが
ペリーの強行姿勢は、結構演じているところがあって
実は、日本に好印象を持っている
日本学のお陰で、日本人の気質や能力も理解していて
植民地化は不可能だと始めから思っています。

再来日
開国した日本。
オランダとも修好通商条約を結びます。

その経緯を持って、シーボルトの罪が解かれることになります。

シーボルト再来日。

将軍家茂からも大歓迎の接待を受けます。
結構あっさり手のひら返しますね

滝さん、イネさんとも再会を果たします。
めでたしめでたし。

索引はこちら
[江戸の理系力]シリーズはこちら(少し下げてね)

シーボルトの続き。あの事件とその後」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: 楠本イネ、壮絶なる人生 | でーこんのあちこちコラム

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