小さな富士山が担った役割。

富士講。なぜ日の出を背にして拝むのか
の続きです。

富士塚
高田富士の話はしました
富士山が好きすぎて、自分で作っちゃいました。

富士講で代表者が富士登山するにしても
代表者以外の人は富士講に入る面白味に欠ける。

ほら、この富士山に登ると本当の富士山に登ったのと同じご利益があるよ
ええっ、そりゃ便利

高田富士が評判を呼び
我も我もと違う富士講が自分達の富士塚を作り出す。

面白いのは、実際の富士山が見える地域でのみ、富士塚が作られていること。
富士登山の疑似体験に加え、富士山を良く見えるようにビューポイント。

(※以下、資料は、「富士講からみた聖地富士山の風景」からの引用)
また、富士山に近い地域でも作られない。

特に、富士山に登れない人にとってみれば、富士塚は必須。
お年寄りだったり、特に女性。
当時、富士山は女人禁制で、女性は登れなかったんです。

こんな風に、どんどん富士塚が作られていきます。

鳩の森神社の富士塚

護国寺の富士塚(音羽富士)

明治の富士講と富士塚
富士塚って、江戸時代に作られたとばかり思っていたんだけど
表を見る限り、明治になってからも、さらにどんどん作られている。
こりゃ、予想外

品川神社の富士塚

成子天神の富士塚

清瀬の富士塚

こんな資料もある

1868年が明治維新なので、むしろ富士講の人達の登山回数は、明治になってから飛躍的に伸びている

実は、明治になってからの富士講と富士塚は変質していくんです。

富士登山は、阿弥陀如来の御来迎(ごらいごう)で人気を博したと書きましたが
何と明治政府はそれを変えちゃった。

富士山に祀られているのは、阿弥陀如来ではなく、木花咲夜姫(このはなさくやのひめ)です。
廃仏毀釈。仏教を否定して、神道こそ唯一にした。

そんなこと、急に言われても。
阿弥陀如来は西にいるけど、木花咲夜姫は西にいるって訳でもないので、御来迎の意味付けが薄れちゃった。
西に向かって拝むのをやめて、東の太陽そのものを拝みましょ。
御来光(ごらいこう)です。

これこそ、180度の転換

明治政府の思惑は見事に外れ
木花咲夜姫ありがたや、とはならなかった。

これは、明治政府にとって痛手だっただけではない。
富士講にとって、嫌な予感。
富士山の宗教的意味合いが薄れていく訳ですから。

あれ?変ですね
富士塚はむしろ明治になってから多く作られている。

先ほどのグラフをどう見れば良いんでしょう。

明治になると
大月まで電車が開通

江戸末期に、江戸から富士山への往復で10日かかっていたのが
3~4日で出来るようになる。

また、明治5年に、富士山の女人禁制は解除されます。

女性は実際の富士山には登れないから、という
富士塚の存在理由の大きなひとつはもう失われている。

資料の見方の難しさを物語っていますね。
量的に増えた、イコール大流行と考えて良いのかって事

富士講の焦りとは考えられないでしょうか。

確かに誰でも登れるようになったから
登山回数という量的な面は飛躍的に伸びる
その一方で、希望者全員登れるとなると
代表者のために金を出し合ってという、講の存在意義、質的な面は同時に低下していた。
信仰ではなく、単純な旅行
互助会ではなく、旅行積立て

富士講の焦りは、富士塚を作ることによって
富士講員を繋ぎ止める方法として現れている気もします。

富士塚に、石碑がやたらに増えていったのもこの時期
江戸時代に出来ている富士神社の富士塚も
明治の時期に多くの石碑が据え付けられています。

富士神社の富士塚

富士講の行事の中で
富士塚の頂上から綱を張って、そこから色とりどりのタオルを垂らす、万国旗のようにしていたということもあるようです。
富士塚を利用して何とか盛り上げていこうとあの手この手です。

戦後
グッと時代は過ぎて、とうとう、富士塚と富士講は衰退期を迎えます。

交通網の更なる発展で、3~4日すら必要ない。

富士講で積立て?
そんなの入らなくてもいつでも行けますけど。

富士塚は、6mに満たない高さのものはことごとく壊されていく。

今、大規模書店以外の小さな本屋さんがつぶれているのと一緒

そう。
富士講は、厳しくても
富士塚の大きいのは残り得る

東京をくまなくウォーキングをして、
なんと富士塚の多い事かとビックリしたのが、調べ出した始まりですから。

衰退はすれども消滅はしない
どっこい生き続けている

なぜかって?
登ってもらえれば分かります

存在意義なんて理屈抜き

高いところは楽しいっ

索引はこちら

[江戸の文化]シリーズはこちら(少し下げてね)


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