[大奥]15 一条美賀子。身代わり正妻。

いよいよ、大奥シリーズも最後の15代将軍となりました。

林真理子さんの「正妻」という小説を読みました。

一条美賀子(いちじょうみかこ)
13代将軍家定の後の後継者争いが最も激しい頃
一方の候補者、一橋慶喜(ひとつばしよしのぶ)の正妻選びが行われます。

ひょっとすると、そのまま、慶喜が将軍になり、御台所(みだいどころ)になる可能性もあります。
将軍の正妻の慣例に従って選びましょう。

慣例は、宮家(天皇の親戚)か五摂家(摂政関白に成り得る特別の名門)

五摂家、一条忠香の娘・千代君(照姫)と婚約
婚礼を待つのみ

ところが、婚約後、疱瘡(ほうそう=今の天然痘)を患ってしまいます。
幸い命はとりとめましたが
顔に大きなあざが残りました。

今出川延(いまでがわのぶ)にお呼びがかかった。

うちに養子に来てもらえんやろか

この顔で嫁に出すのは憚れる
かと言って、丸きり断ってしまうのは難しい。
身代わり立てましょ、と。

えっ、私、摂家でもないですし。

いやいや、ここだけの話。
先の家定公の時、うち一条家から娘を出したんやが
分家の娘を養子にもろうてな。

家定の一人目の正妻が亡くなって、二人目の正妻は一条秀子
分家とは言え、最も貧しい下級公家の娘。
すぐに亡くなってしまう。
まあ、その時よりはまし。
という表現もどうかと思いますが。
三人目の篤姫だって、島津家から輿入れ直前に近衛家に養女に入っています。

美賀子にしよう
そなたにぴったりな名前や

一橋
旦那様、慶喜は優しかった。
おそらく、どんな女性にも。

ただ、とても変な性格なんですが。

正妻としての扱いはしてくれた。
それなりの頻度で通っては来てくれる。
ただ、その最中にも心ここにあらず的感じがする
気のせいだ。
そう思うことにしよう。

慶喜の母代わりとして長く世話をしてくれている、徳信院(とくしんいん)という女性がいる
ただ、母代わりと言ってもとても若い。
慶喜とそれほど歳が違わない。

徳信院は謡曲がとても好き。慶喜も好きで毎晩のように部屋に通う
美しい人

嫉妬した。

謡がそないに好きであらしゃいますか

ああ、一番の楽しみだ

それは、徳信院さんと御一緒やからでないですやろか
殿様は、女として徳信院さんをお好きなんと違いますやろか

たわけ

扇子が飛んできた
眼が充血し、肩で息をしている。

ここには二度と来ぬ。分かったか。それが嫌なら京に去れ。

季節が変わっても、慶喜が美賀子の部屋を訪れる事はなかった。

周りでは、徳信院に詫びを入れ、慶喜との間をとりなしてもらえと言う
意味が分からない。
なぜ、正妻の自分が詫びを入れないといけないのか

気が狂いそうになる
何の為に自分はここにいるのか

紐が目に入った。
鴨居の下に台を置き、紐を渡した。
紐が首を締め付ける

助けてー

目を開けると、女中の顔が見えた

死ねなかったのか。
情けない。
なぜあの時、声をあげてしまったのか

薬で眠り続け、次に起きたとき、目の前に男性がいた

殿様
みっともないことをいたしました。
こうなりましては、京へ去る覚悟でございます。

別に帰らなくても良い
大変驚いた。
それほどのことなのであろうか、私のしたことは

私にとりましては・・

女というのは本当に分からん

謝罪や慰めの言葉はなく
疑問や苛立ちの言葉ばかり

自分がしたことを考えるとある程度は分からないではない。

でも、次に口から出てきた言葉が信じられなかった。

この際、お前に言っておくことがある
わしは女に大層好かれるのだ

・・・

これからも女の事で何かあるかも知れぬ
ただ、それはわしからではなく、女の方が勝手にわしを好いてしまうのじゃ。
そなたは正妻じゃ
美しいし、わしはかなり気に入っている
しかし
嫉妬深いのは大層困る
何かあるたびに首をくくられては大変困る

この自殺しかけた女性を前に言うべき事だろうか

具合が良くなってから
慶喜は毎晩のように部屋に来るようになった
激しく求めることもある

あまり考えないようにしようと思った
そして、美賀子なりに一つの結論を出した。

殿様は本当に変わったお人なのだ

出産
二年が経過した。

子供が欲しい
そう思うようになっていた。

そして、その日がやって来た。

女の子だった

申し訳ございません

良い良い。別に女でも構わぬ

殿様、この子の名前でございますが

ああ、好きなようにすれば良い

お名前を一文字いただけませんでしょうか
喜子(よしこ)と名付けとうございます。

いかん。喜子はいかん。

そやかて、殿様のおめでたい字にあやかりとうございます。

いつ頃だったかのう。一昨年くらいの夏だったと思う
女中が孕んでわしの子を産んだ。
勝手に喜子と名付けたが、その日のうちに亡くなってしまった。
縁起が悪いから別の名を考えることだな。

慶喜は席を立った。

女中が目を真っ赤にしている

殿様は、何と言うことを言わはりますのやろ
前に赤子がいらしたて、今このおめでたい席で言わんでも。

ええんよ
殿様のああいうところは慣れてます。
名前は、喜子にするから。

えっ

ええの。私が決めたの
喜子て大きゅう書いて貼ってちょうだい。

ねえ、喜子。
喜子。

今後はこの子のためだけに生きていく。
殿様の子を産んだ。
徳信院に出来なかった事を私はやり遂げた。
もう、夫の子を産むことはないだろう
夫にはもう絶望しているから
失望している夫に今後抱かれる事はない。

男の子は側室が産めば良い。

喜子さえいれば

続きはシリーズの次回にね

[大奥]シリーズはこちら(少し下げてね)

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