[大奥]15 一条美賀子。日本一の卑怯者に何とする

[大奥]15 一条美賀子。身代わり正妻。
の続きです。

喜子(よしこ)を産んだところまででしたね

産婆に母乳を渡し、喜子に飲ませてもらう
自分ではまだ体力が回復していない。

ああ、早く、この手に抱いて、お乳をあげたい。

・・・

君さん、君さん
揺り起こされて起きた。

ただいま、喜子様がおかくれになりました。

たった四日の命だった。

喜子、もう一度泣くんや。喜子、しっかりせなあかん

おつらい気持ちは分かりますが、気をお確かに
一人目のお子さまが育ちにくい事はよくあること
次に丈夫なお子を産めば良いのです。

何も分かっていない。
もう、慶喜との間に子をなすつもりがない。
この子だけなのだ。

喜子を返して。返すんや。

君さん、あきまへん。

顔をもっとよう見るだけや
大丈夫や。私は気もふれぬ。死にもせん。
あきらめたわ。私も今、喜子とともに死んだんや。

御台所へ
時代は次から次へと動き、
慶喜は、京都に行ったっきりになっている
たまに帰ってきても、夫婦の交わりはない。

次から次へと女は作る
少しばかりの嫉妬心が残ってはいる
その事にむしろ安堵するが、ほんの少しばかり

手紙は頻繁に書いた。
すぐに返事は来る

慶喜がフランス語を習えと言う。
挨拶だけで良いから出来るようにしておいてくれと。

小栗上野介(おぐりこうずけのすけ)が講師としてやって来た。
小栗に世の中の事を色々聞いた。
手紙の中身とも考え合わせて、やはり、大きく変わっていっていることが
美賀子にも良く分かる。

京都から早篭が来た。

将軍家茂様、大阪城にて、みまかられたそうでございます。

そばにいた、女中の宮路が
いよいよ、御台所にならしゃるのですね

滅多な事を言うものではない。
それに、殿様が将軍になると決まってはいない。
殿様はお継ぎにはならんはずや。

最初に言われた。
自分は決して将軍になるつもりはないと。

美賀子としても、御台所だけは嫌だと考えるようになっていた。

ただ、慶喜以外に将軍になりえる人物がいない事も明らかだった。
実際に、家茂が存命のときにも、指揮していたのは、慶喜だった。

4ヵ月断り続けたが、もうこれ以上は断れなかった。

不本意ながら、美賀子は御台所になってしまった。
相変わらず、慶喜は京都にいるまま

美賀子としては、一橋家の正妻で充分だった。
さらに言うと、一つのイメージか美賀子の頭の中で明確になってきていた。

徳川は、なくなる

美賀子が輿入れしてきた時、
丁度安政の大地震が起きた。

一橋家の屋敷が壊滅的で、仕方なく江戸城本丸の大奥に預けられたことがある
見るもの聞くもの、美賀子には、ずれている、としか思えなかった。

御台所になってしまったのは今更抵抗しようがないが
江戸城本丸に入るのだけは嫌だった。

私は、江戸城には入らない。

普通なら、100%あり得ない事だったが
普通ではなかった。
時代が普通じゃなかったし
慶喜が普通じゃなかった。

そもそも慶喜は、一度も江戸城本丸に入っていない。

「新御台所さまご病弱のため、大奥での生活は叶わず」
という願いを一橋家から出してもらった。
受けとるのは、慶喜
何ら問題ない。

今まで、美賀子には自殺騒動など色々あったため
大奥では気鬱だとの噂がたっていた。
肝心の大奥の女たちも拍子抜けするほどあっさりと
「御台さま不在」を受け入れた。

挨拶に行かない訳にはいかない
一橋家は大きな意味では江戸城の敷地内
ふと背伸びすると、本丸が見える位置

運悪く、挨拶の少し前に、京都から、驚くべき報せが届いた。
孝明天皇崩御
あまりに突然だった
妹、和宮は挨拶の場に欠席。

天璋院篤姫は
今後は、静寛院様(和宮)も含めて、力を合わせ、徳川を守っていきましょう。

何のために?
と喉元まで出たが、押し殺した。

逃亡
どんと省略し
鳥羽伏見の戦い
新政府軍と幕府軍の、世紀の一戦

日本史三大不思議の一つと思っているんですが
決戦の前夜
幕府軍のみんなを残し
大幹部の松平容保、松平定敬、老中の板倉勝静、酒井忠惇などを騙して
一緒に開陽丸に乗って、大阪から江戸に逃げ帰っちゃった。

指揮官達不在の中で、当然大敗北。
これで、幕府が無くなることが決定した

史上最大の卑怯者です。

慶喜の行動には、どんなことでも驚かなくなっていた美賀子だが
この時ばかりは皆目分からなくなった。

江戸でも大わらわ
慶喜は罪人として扱われます。

尋問などで、江戸城へ
美賀子は会えません。

まずは謹慎
慶喜は寛永寺に向かいます。

その道中を狙って、着替え等を持っていく。

お着替えお持ちしました
その他、何かお要り用のものがありましたらお持ちしますが。

当面、何も要らん。

事務的な会話
世間的には、幕府を無くした張本人の卑怯者なので
命は無かろうと思われている。
今生の別れになるのかも知れないけれど。

でも、美賀子にはそうならない確信があった。
あの人は、そういう人じゃない。

続きはシリーズの次回でね。

[大奥]シリーズはこちら(少し下げてね)

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