[ことば日本史] ヌエの泣く夜は恐ろしい

ことば日本史シリーズ、平安時代です。
ちょっと前に、三十六歌仙シリーズの、藤原高光で
「さるとらへび」という怪物を退治した話をしました。
[三十六歌仙]28 藤原高光。さるとらへびよ、わしが相手だっ

偶然ではありますが、人物が違ってとても近い話になります。

ヌエ
近衛天皇の時代、夜な夜な、宮廷の上空を黒雲が覆い、天皇がおびえることがつづいた。
そこで弓の名手として知られた源頼政に、この怪物退治が命じられる。

はい。
今度は源頼政です。

弓は、武士のシンボルだ。
それは、武具であるとともに呪具でもある。
宮廷や貴族の屋敷では、出産、病気、天皇の入浴時など、
ことあるごとに弓の弦を引き放って音を立てる「鳴弦の儀」ということが行われていた。
その音によって、鬼や邪気を払ったのである。

宮廷で鳴弦を行ったのは、禁中の警護役の「滝口」という武者たちだった。
寛平年間 (889~898年)に設けられた役職で押領使と同じく、
武士の発展の足がかりとなったとされる。

武者のもつ「武」の呪力によって、
内裏を襲うモノノケやケガレから天皇を守ることが職務であったという。
その滝口を歴代つとめた渡辺党という武士団を郎党としていたのが源頼政。
頼政は摂津 源氏の嫡流、源氏の棟梁であった。
棟梁という言葉もこの前出てきました。

その頼政に妖怪を退治できるか否か。
そこには弓矢を取る者としての威信がかかっていただろう。

頼政は、御所の庭で待ち受けた。
やがて黒雲が現れると、すかさず、その中心がけて矢を放つ。

ひょおおおお

みごとに的中

墜落してきたものを見れば、頭はサル、胴体はタヌキ、尻尾はヘビ、手足はトラという、
なんともつかぬ奇妙な物である。

おおっ、出ました。
これは、藤原高光の時の「さるとらへび」

ここでは、その怪物に名前はないということになっていて
鳴く声が鳥のヌエ(トラツグミ)に似ていたとあることから、ヌエと呼ぶようになったという

そこから、正体不明なつかみどころのないものをヌエというようになるんです。
ぬえのような人物とか、ぬえ的存在とか

ヌエの泣く夜は恐ろしい
角川映画の「悪霊島」
キャッチコピーが「ヌエの泣く夜は恐ろしい」でした。

岩下志麻、美しいですね。恐ろしいですね

[ことば]シリーズはこちら(少し下げてね)

[ことば日本史] ヌエの泣く夜は恐ろしい」への1件のフィードバック

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