[百人一首]64 朝ぼらけ~。チャラい男ってどう?

朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに
あらはれ渡る 瀬々の網代木

夜がほのぼのと明けていく冬の朝、
時間の経過にしたがって、宇治川にたちこめた霧が晴れてゆく。
川霧がとぎれとぎれになって、
その間から川の浅瀬に仕掛けられた網代木が見えてくるようになったなあ。

藤原定頼
出ましたっ
藤原定頼(さだより)
覚えておられますでしょうか。

小式部内侍に、お母さん(和泉式部)に連絡取らなくて良いの?
などといらんこと行ってやり込められちゃった、あの定頼。
[百人一首]60 大江山~ 和泉式部の娘。ちょっと待ったぁそこのおっさん

その前に、紫式部に対して、
この辺に若紫はいらっしゃいませんか?
と、これまたいらんこと言っています。

嫌な奴かと思いきや
なんとも人間味溢れるキャラクター

私は好きですね
こういう人。

お父さんは、藤原公任
おそらく歌人の中では歴史上最も有名。
当時人気とかいうレベルではなく、「歴史上」

その息子な訳ですから
歌に関しては全くレベルが違います。
少年の時、すでに
一条天皇の大堰川行幸のお供でみんなを唸らせる歌を詠んでいます。

性格は喧嘩っぱやくて、おっちょこちょいで、ちゃらんぽらん。
今風に言うとチャラい

本来ならもっと出世して良さそうなのに
何度も失敗して、謹慎させられたりと
あんまり出世していない。

生き方が下手、ってやつですね

女性にはモテモテ。
付き合っている相手が違います。

大弐三位(だいにのさんみ)(紫式部の娘)や、相模(このあと百人一首で出てきます)。

世間的には、チャラいと思われているけど
本当の姿は私しか分かっていないのよね
とか
この人、私がついてなきゃダメなのよね
とか
女心のツボが分かっているんでしょうね。

確かに、小式部内侍の件はこの前のブログでも、そこでいただいたコメントでも言われていたけど
自分が有名すぎる親を持った苦労は一番知っているわけだから
親に歌を裏で作ってもらっているんじゃないの?
なんて言うわけない。

あらかじめ、公衆の面前で「ふみ」ってキーワードでからかうよ、
的な事を小式部内侍ににおわせてあれば
小式部内侍ほどの人なら、切り返す歌はあらかじめ作っておける。
「いらんこと言い」に見せかけた、男の優しさなんじゃないか。

鑑賞
「網代(あじろ)」は、冬に氷魚(ひお、鮎の稚魚のこと)を取る仕掛け
川の浅瀬に杭を打ち、「簀(す)」という竹や木で編んだざるを仕掛けるもので、
当時(平安時代)の宇治川の風物詩。
「網代木(あじろぎ)」は網代の杭になります。

定頼のレベルになると、技巧的な技は使い尽くしているので
逆に全く技巧を使わず、ただただ情景を詠うという余裕の詠い方。

だんだん霧が晴れていって、網代木があっちにも、次はこっちにも。
目の前に情景が浮かびますね。

一番のポイントは、これが宇治だということ。

宇治は、やんごとなき人達にとっても特別の思い入れのある憧れの土地。
お公家さんたちの別荘地なんです。

そして、当時の超ベストセラー、「源氏物語」の中でも続編的な意味合いで
光源氏が登場しない、「その後のお話」である「宇治十帖」の舞台。

紫式部にいらんこと言った例からも分かるように
定頼は源氏物語の事をかなり読み込んでいると思われます。

この歌は、ある意味、源氏物語(宇治十帖)に対する、読書感想文みたいなもんじゃないでしょうか
あるいは、応援ソング。

実は、宇治十帖って紫式部じゃなく、娘の大弐三位の作だという説もある
恋人、大弐三位に対する賛辞。

大弐三位レベルになると、誉められ尽くしているでしょうから
下手に愛しているよだの、綺麗だねなんてな事を言うより
やった仕事を誉められた方が嬉しいかもしれない。

以前に漫画であったジョージ秋山の「浮浪雲」の主人公みたいな感じかも知れない。

出世?
つまりませんな。
そんなことより、みんなが楽しく暮らせれば。
おっと、間違えましたわ
実はそんなこと
なーんも考えとりませんわ

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