[百人一首]89 玉の緒よ

玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば
忍ぶることの よわりもぞする

わが命よ、どうせなくなってしまうのであれば
すっぱりとなくなってしまっておくれ
生き長らえてしまうものなら
秘めた恋を隠しておく力が弱ってしまい
どうなってしまうか分からないから。

式子内親王
後白河天皇の次女です。
斎宮になるのですが、病弱で、斎宮の職を解かれます。
斎宮って何かは後でね
激動の時代に飲み込まれ
とても不運な人生を歩みます。

特に、身内の不幸が立て続けに続く。
叔母さんの八条女院の病死に辺り、呪いをかけたのではないかと疑われたりもしている。
全く意味不明ですが、本人かなりダメージを受けたようで、出家してしまいます。

歌人としてはかなり優秀。
名歌を多く残し、三十六歌仙に数えられています。
歌の先生は藤原俊成。藤原定家のお父さんですね。
そんな事から藤原定家とも仲良しです。

鑑賞
百人一首の人気投票をすれば、必ず一位か二位に入る超人気の歌だそうです。
気合い入れましょう。

玉の緒は命の事です。
元々は数珠のように玉を結んで繋げる紐の事ですが
昔は心と体は紐で繋がっていると考えられていたので
玉の緒が切れると死んでしまいます。

たおやかですね
今後は
わちゃー、死ぬかと思った
と言うときは
玉の緒切れるか思った
と言うことにしましょう。

どうせいつかは切れますね
じゃあもう切れても良いですよ
いえむしろ死にたいです。
死んでしまった方が良いんです。

この時期の例に漏れず
題詠ではあるのですが
おそらく本音でしょう

悟られてはならない禁断の恋
情念です。
天城越えの世界です。

逢ひ見ての 後の心に くらぶれば
昔はものを 思はざりけり

の相手、雅子内親王

今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを
人づてならで いふよしもがな

の相手、当子内親王

いずれも哀しいドラマになります。
どうにかならんのでしょうか、この斎宮という制度

内親王、平たく言うと天皇の娘は特に
斎宮という神職につく場合が多い

一定期間の職で、その期間は全て神様のためにのみ尽くす。
その時は結婚も、おそらく恋愛も禁止

決まり的には、その期間が終われば無罪放免の筈なんですが
前の二つの歌の例でも、結婚禁止が重くのしかかるようです。

式子内親王も斎宮は終わっているので
問題ないはずなのに
どうも、すっきり自由恋愛って感じにならない。

お相手、藤原定家との年齢差もあるんでしょうか
家柄的には藤原定家だと申し分ない気がするんですが

えっ?そうなの?
あくまでも噂
諸説ありましてね

仲は良かったとしても式子内親王は14歳も歳上ですから
どうなんでしょう

ずっと後に作られた能の「定家」でそういう設定になっているので
藤原定家恋人説が定着しちゃいました。

命かけて秘め事を守り続けた訳ですから
真実が分かるわけないですもんね。

でも、もし本当だとして
藤原定家が百人一首に、この歌を選ぼうと思ったときの心の動きは
想像すると、何とも複雑ですね。

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