[吉岡宿の奇跡]3 せがれの気持ち

[吉岡宿の奇跡]1 吉岡宿を救いたい
[吉岡宿の奇跡]2 大きな一歩
の続きです。

せがれ
穀田屋十三郎と菅原屋篤平治で始まった、この取り組み
大肝煎の千坂仲内という強力な賛同者は得たものの始まったばかり

十三郎はそもそもせがれにさえ打ち明けていない。
せがれは音右衛門(おとえもん)
どこかよそよそしく、腹を割って話をしたことがない
穀田屋の家督を継いでもらうために養子に迎えた。
真面目で頭も良かったが仕事上の言葉を交わしたことしかない
仲が悪い訳ではないが、そうなってしまっている

事を始める前に打ち明けるべきだったろう。

吉岡宿は救えたとしても、私財を全て投げ出すつもりだから
その先に待っているのは、穀田屋の破産
先祖から受け継いで来た穀田屋
自分は吉岡宿のために、覚悟を決めているが
穀田屋はもう、自分のものではなく、音右衛門のもの

私は穀田屋を守るために呼ばれたんじゃなかったんですか

そう言われたら返す言葉がない
確かにそのために来てもらったのだから

一緒に死んでくれ、というほどの事なのに
腹を割って話したことがないなんて、自分が腹立たしい。

十兵衛
ある日、音右衛門に声をかけた

音右衛門。これより十兵衛殿に会いに行く、付いてきてくれ。

何のご用事でございましょう。

来れば分かる。とにかく参れ。

十兵衛とは、穀田屋十兵衛
屋号を同じくする同族。
もし穀田屋十三郎が破産すれば、十兵衛にも影響が出る

堰を切ったように話した

吉岡宿を救いたいという気持ち
そのために、資金を集めて、殿様に貸し、利子をもらうというプラン
すでに大肝煎りも承知していること
ただ、資金の目処は全くたっていないこと
穀田屋を潰す覚悟で臨んでいること

十兵衛と音右衛門は真剣な面持ちで、じっと音もたてずに聞いている

話終えると、怒号が浴びせられるだろう
潰す覚悟なんて言っても
このふたりがノーと言えばやっぱりノーだ

ところがまたしても信じられないことが起きた

十三郎さん、あんたあっぱれだよ
あんたたちが風呂をやめて水垢離(みずごり)を取ってたのはこのためだったんだね
わしもその同志に加えてくれんか

全く予想していなかった反応に、込み上げて来るものがあった
手を取って、ありがとう、と繰り返した。

そして、音右衛門に向き直る

わしはもう五十に近い歳じゃ
生きているうちにこの大願を叶えることは無理だろう
言えた義理ではないが、わしが死んだら、代わりに叶えてくれまいか
わしの魂が必ずやお前を後押ししたいと思う。

初めてお心をうかがいました。
尊いお志です。
お父様の息子であることを誇りに思います。

その時から、十三郎以上にこの計画に奔走し始めた

二人の関係は誰が見てもガラッと変わった

穀田屋では何があったんだ
とみんなが噂し合うことになる

十三郎はこの事が一番嬉しかったろう

同志は5人となりました。

続きはシリーズの次回ね

[歴史]シリーズはこちら(少し下げてね)

[吉岡宿の奇跡]3 せがれの気持ち」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: [吉岡宿の奇跡]4 金のなる木と熊野牛王符 | でーこんのあちこちコラム

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