[吉岡宿の奇跡]2 大きな一歩

[吉岡宿の奇跡]1 吉岡宿を救いたい
の続きです

仕組み
1450両の金を仙台藩に貸し、毎年1割の利息をもらう

ちょっと考えて不思議なのは、貧乏解消の手段として言っているけど
それだけの金があったら貧乏じゃなくなるんじゃないのと

そこは菅原屋篤平治、考えてあって、資金運用力の差
仙台藩には蔵元大文字屋というのがついている
庶民が1450両を持っていっても相手にしてくれないが
藩からであれば資金運用のプロが相手にしてくれ、確実に増やしてくれる
一時で資金集めに苦労しても、末代まで安定して吉岡宿を守ろうという長期的発想
同志を募って資金集めをして、みんなを救おうと

だが篤さん
そんなに都合良く藩が借りてくれるだろうか

仙台藩だって金がない
参勤交代の前とか、喉から手が出るほど金が欲しいときはある筈
その時が狙い目じゃ

徒党を組む事を極端にお上は嫌う
早くに計画が知れれば、謀反の疑いすらかけられる

同志を募るにも慎重に慎重に、信用のおける人だけに話さないといけない

その日から穀田屋十三郎は風呂に入ることをやめた
銭湯で汗を流すことが何よりも楽しみだったがそれを絶った
毎日水垢離(みずごり)を取った
ならばと、篤平治も水垢離

銭湯代を切り詰め、時には断食までして小銭を貯める

怪しい

噂になりだした。
あの二人何か良からぬ事をやらかすんじゃないか

そんな折、大きな変化が起きた
仙台の殿様がご公儀から関東川筋のお手伝い普請を命じられた
費用は仙台藩持ち

まさか、「その時」がこんな早くに来ようとは
目標額ははるか遠い

大肝煎(きもいり)
ゆっくりもしておられなくなった
ここは一気に千坂さまに相談してみようと思う

千坂様は大肝煎(おおきもいり)
他藩では大庄屋の事

百姓側の身分の中では最高位で地域を束ねている。

正気か

遅かれ早かれ、千坂様に打ち明けずして、大願成就はあり得まい
順序を踏んでと思ってはおったが、そうもしておられない

仮に何か訴えたいことがあるとすれば
全て、大肝煎を通さねばならない
大肝煎を飛び越えて直訴することは、死罪にも値する

それは分かるが
話したこともない赤の他人にいきなりか

千坂家は代々大肝煎
今は、30代の青年仲内がつとめているが
その父は、若い頃大酒飲みだった

母が思い余って
「貧乏人には酒も買えないものがいる。お前は酒ばかり飲んで」
と諭すと
不思議なことに酒をぴったりとやめ、薬を買っては貧乏なものに配り始めた
葬式が出せぬものには葬式を出し、金がなくて結婚できないものには金を出した
私財をはたいて、用水まで掘った

それが元で千原家は貧乏に陥り、大肝煎の職を解かれそうになった

村人たちは恩を忘れていなかった

千坂様が大肝煎でなければ困る

みんなで少しずつ金を出し合い、千坂家の借財を返してしまった。

今はその息子の仲内の代になったが、みんなの尊敬を集めていることに違いはない
父は痴呆になってしまったが
看病を奉公人任せにせず、自ら献身的に行っていることが知られていた。

そんな千坂様ならひょっとして
二人は、人目を忍び、ある夜会いに行った

全てを打ち明けた
思いの丈を力一杯に話した

静寂が流れる
仲内は何も答えない

無理だったか


目に涙がたまっているのが分かった

今まで、色んな人がやって来た
金を出すというのもいた
だが、その代わり、というのがそのあとについてきた
上に掛け合って武士に取り立ててもらいたい
正直、最初はその類いかと思っておりました
そのお志し、雲泥の違い
よう分かりました
よう分かりました

お願いがあります

ぜひ今夜から
私もこの企ての同志の人数に加えていただけませんか

全身を震わせながらそういった

この時から同志が3人になった

まだまだ始まったばかりだが、大きな一歩だった

続きはシリーズの次回ね

[歴史]シリーズはこちら(少し下げてね)

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